【サイバー攻撃問題でデタントを提唱―米中にキッシンジャー氏ら】2011年6月15日 産経より
米中国交正常化の立役者となったキッシンジャー元米国務長官とハンツマン前駐中国米大使は14日、米インターネット検索大手グーグルの電子メールサービス利用者に中国からのサイバー攻撃があった問題に絡み、米中両国が緊張緩和(デタント)に向けた措置を取ることが必要だと強調した。ロイター通信が報じた。
キッシンジャー氏は、両国は際立ったスパイ能力を持つ一方、共に国際的なハッカー集団の被害者だと指摘。
米中がサイバー攻撃を制限する全般的な合意をしなければ「個々の攻撃について、告発合戦になってしまう」と懸念を示した。
ハンツマン氏も「いずれかの時点で中国に侵入されたくない領域に線引きし、中国側も入られたくない範囲に線を引かなければならない」と指摘、両国がサイバー攻撃しない領域を取り決めるなどの具体案を示した。
引用、以上。
キッシンジャー元国務長官より出された米中両国の緊張緩和(デタント)の提案は興味深いものですが、大きく2つのポイントからして上手く機能することは難しいと考えられます。
1つ目は冷戦時の米ソ両国の「デタント」は、期待されていたほど軍事的な緊張緩和を実現できなかったことが挙げられます。
1970年代まで続いたデタントは主に米ソ両国が大量の核兵器を生産・配備し続けることへのリスク認識と、ベトナム戦争に米国が負けたことでソ連に一定の譲歩をせざるを得なくなったことがデタントの原動力となっていました。
しかし、ソ連がアフガニスタン侵攻を開始したのと、米国で共産主義との対決を標榜したレーガン政権の誕生により再度緊張状態に戻りました。
2つ目はネットワークに不可侵領域(外部にインターネットを接続しないなど)を設けたとしても情報流出を減らすことはできないということです。
近年、米国で中国が原因と思われる情報流出・違法アクセスで問題となっているのは、社会インフラへの攻撃だけでなく、軍事機密の漏えいが問題となっています。
この違法な軍事技術へのアクセスは、主に内部の人間(中国系米国人など)によって引き起こされるものであり、外部からネットワークを遮断したとしても情報流出は避けられないことは明らかです。
この2つのポイントによってサイバー空間でのデタントは実際には機能せず、引き続きサイバー空間での緊張状態は続くと見られます。