【退任前の米国防長官「どこの政府もウソをつく」】2011年6月16日 読売より
ゲーツ米国防長官が6月末の退任を目前に「本音」ベースの発言を連発し、話題を呼んでいる。
ゲーツ長官は15日、上院歳出委員会の国防小委員会で証言し、議員の1人から「我々にウソをつくパキスタン政府をいつまで支援するのか」を聞かれたのに対し、「中央情報局(CIA)での27年間、今の仕事での4年半の経験から言えば、どこの政府も互いにウソをつくものだ」と切り返し、会場の笑いを誘った。
長官はまた、北大西洋条約機構(NATO)がアフガニスタン治安部隊の育成に支出している支援額が極めて低く、「まるで冗談だ」と一喝。
長官は10日、ブリュッセルでの講演でも、「国防に取り組む意思も能力もない同盟国を支援するため、我々が貴重な資源を割く意欲や忍耐にも限りがある」と述べ、欧州諸国の米軍依存姿勢を厳しく批判した。
引用、以上。
この記事でゲーツ長官が述べている「どこの政府もウソをつくものだ」という発言はなかなか理解しにくいものであるかもしれません。
国家間の外交関係においても「ウソをつく」ことは大きなリスクを伴うために、あまり行われるものではありません。
ウソをつき、それが発覚した場合、相手国から取り交わした約束を守らない国家であると見なされるからです。
しかし、それでも国家の指導者や政府は時としてウソをつきます。
「大国政治の悲劇」の著者であるジョン・J・ミアシャイマーは今年出版された著作『リーダーはなぜウソをつくのか?:国際政治学からみた「ウソ」の真実』のなかで「国家がつくウソ」について分析し、主に以下の十個のパターンに分類しています。
(1)自国の強さを誇張して敵を抑止しようとする場合。
(2)自国の能力をわざと低く宣伝して相手国を油断させようとする場合。
(3)自国の攻撃的な意図を隠して相手を油断させる場合。
(4)敵意がないように見せかけて、敵国を刺激しないようにする場合。
(5)「中身のない脅し」を行う場合。
(6)敵国に対して、自国や他国を攻撃させようとする場合。
(7)同盟国に対して敵国の脅威に気づかせようする場合。
(8)平時にスパイ行為をしていたのを隠そうする場合。
(9)戦時に敵を欺こうとする場合。
(10)他国と条約などを交渉している時に有利な条件を引き出そうとする場合。
中国政府や北朝鮮政府などは当てはまる項目が多いと考えられます。
また、このウソの背景には常に「国益を優先する」という論理が働いているため、これを理解できない国民は政府に対して「騙された」と非難することになります。
国際政治の動向を理解するうえでも「国益」という概念は必ず理解しなければならないものと言えます。