【エジプト情勢、米政権の基本認識に乱れ同胞団を「無宗教組織」】2012年2月12日 産経
エジプト情勢を注視するオバマ米政権のクラッパー国家情報長官が10日の議会証言で、イスラム原理主義組織の「ムスリム同胞団」を「無宗教の組織」と評したことに政権内外から抗議がぶつけられた。
オバマ政権は訂正の声明まで出したが、クラッパー長官の証言はオバマ政権内部のエジプト情勢の基本認識の乱れを明示したといえる。
クラッパー長官は「エジプト情勢の米国にとっての意味」などを考える下院外交委員会の公聴会で、議員側からムスリム同胞団の実態について問われ、「ほとんど非宗教の多様なグループで暴力を避けている」と証言した。
ところが現実にはムスリム同胞団はその憲章でもイスラム教の教えを前面に掲げ、イスラム教の国家や政権の樹立を求めている。
このため国家情報局は長官の証言後すぐに「ムスリム同胞団は非宗教組織ではなく、クラッパー長官もそのことは知っている」とする“訂正”を発表した。
またロバート・ミューラーFBI(米連邦捜査局)長官は同日の別の議会証言で「ムスリム同胞団はテロリズムを支援したこともある」と述べ、クラッパー長官の証言を否定した形となった。
政権外でも共和党のマーク・カーク上院議員は「クラッパー長官の描写はムスリム同胞団自身が宣言している活動方針には矛盾しており、現実のその活動は過激だ」と批判した。
外交評議会の研究員で中東情勢に詳しいエリオット・コーエン氏もクラッパー長官の証言を「信じられない」として同長官は責任をとって辞任すべきだとも語った。
ムバラク大統領が辞任した場合、ムスリム同胞団が現在は非合法とはいえ、最大の野党勢力として影響力を強める公算も大きい。米国として、同胞団にどう対応していくのか決める必要に迫られてきているが、オバマ政権は同胞団の正確な実態把握も十分でなかったようだ。
引用、以上。
エジプト情勢の今後に大きな影響力を持つであろう「ムスリム同胞団」について、オバマ政権の心もとない認識があらわになりました。
この記事はムスリム同胞団が「非宗教組織」なのか「宗教組織」なのか、「穏健派」なのか「過激派」なのか、米側の分析が未だ不十分であることを示しています。
今後、公正な選挙が行われることになった場合、過半数をとるかどうかはわかりませんが、イスラム原理主義系の政党ができ、それが第一党になることが確実視されています。
イスラム政権ができた場合、「反米・反イスラエル」を旗頭としては掲げることは間違いなく、中東の安定化に向けて、これまでアメリカが築いて来た努力が水泡に帰すのか、オバマ政権の舵取りが注目されています。