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2010/12/30 【政策と経営で韓国への巻き返しを急げ 】

【政策と経営で韓国への巻き返しを急げ 】(2010/12/27 日経新聞より) 

韓国企業が世界市場で存在感を一段と強めている。日韓は電機や自動車など産業構造が似通う。最大のライバルだけに、韓国の台頭は無視できない。政策と経営の両面で、韓国への巻き返しを急ぐ必要がある。

日韓の貿易構造は、韓国の対日赤字が恒常的に続いている。赤字額は昨年も約280億ドルに上った。いまや薄型テレビ、半導体などで世界市場を席巻する韓国だが、部品や素材の多くは、高い技術力を持つ日本に頼らざるを得なかったからだ。

ところが日本が得意としてきた先端分野にも、韓国勢がどんどん進出してきているのが現実である。

足元の日本市場でも、LG電子が高級薄型テレビの販売を始めた。NTTドコモが10月末に売り出したサムスン電子製のスマートフォン(高機能携帯電話)は品薄状態が続く。若者層を中心に日本の消費者は今や韓国との技術力の差を意識しない。

韓国勢の攻勢には通貨のウォン安の恩恵もある。だが迅速な経営判断、成長分野への投資、選択と集中、徹底したグローバル展開は、日本企業との勢いの差につながっている。韓国の経済規模は日本のおよそ5分の1だ。国内の市場が小さく、海外に成長の糧を求めるしか生き残れないという危機意識は徹底している。

政府の後押しも見逃せない。1997年のアジア通貨危機をバネに、輸出主導の成長戦略に腰を据えて取り組み、主要産業の再編、法人税の引き下げ、自由貿易協定(FTA)などを戦略的に進めてきた。FTAでは、巨大市場の欧州連合(EU)や米国との交渉も妥結させた。このままでは日本企業が不利な競争条件に立たされてしまう。

日本は真剣に韓国に学ぶべきだ。そのうえで国際競争力を取り戻す方策をとっていく必要がある。

原子力、太陽光パネルなど、日本が誇る最先端分野はまだ多い。重要なのは、成長分野で世界の最強企業をつくっていく見取り図であろう。そのための業界再編は、真正面から検討していくべきではないか。

菅政権は来年度の税制改正で、法人税の実効税率を現行の40.69%から約5%下げることを決めた。だが約24%の韓国との差はなお大きい。FTAでは、米国や豪州などが交渉を進める環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を、いわば最後のチャンスとして取り組むべきだ。

業界再編を促すため、独占禁止法の弾力的な運用も検討課題だろう。国内の消費者に不利益となる事態は避けるべきだが、世界市場をにらむ企業に対しては、規模の追求を後押しすることも考えたい。

世界では今、官民挙げての国家戦略がぶつかり合っている。手をこまぬけば、日本は埋没してしまう。

以上、EUと韓国は10月に自由貿易協定(FTA)に正式署名し、来年7月から工業製品の9割以上の関税が撤廃されます。また、12月上旬には難航していた米国と韓国とのFTA交渉が合意に至り、両国間の95%以上の関税が段階的に撤廃されることになりました。

アジアとの関係強化を図るEUはインド、シンガポールともFTA交渉を進めており、関税というハンディを背負ったままの日本の輸出産業は大きな打撃を受けることとなります。

長年の懸案とされてきた日米FTAは両国とも交渉のテーブルにさえついていません。現在の民主党政権も、マニフェストでは「日米FTA推進」を掲げていましたが、農業関係者の強い反対により、自民党と同じく腰砕け状態にあります。

韓国は大統領の強いリーダーシップでFTA交渉を進めて来ましたが、日本が世界の自由貿易圏構想から取り残されないためにも、農業のイノベーションと合わせてTPP参加や、官民一体となった成長産業の育成に取り組むべきです。