今国会では、いわゆる「年収の壁」の解消が論点の一つとなっています。
年収の壁とは、例えば、パートの妻の年収が130万円以上になると、夫の扶養から外れ社会保険に加入しなければならなくなり、その保険料が高額であるため、結局、手取りが大幅に下がるので、年収が130万円を超えないように調整することをいいます。
もともとは、年収の少ない労働者を保護する目的がありましたが、現状では、労働を制限し、年収がある一定額よりも増えない足かせとなっている側面があるのです。
一方で、政府与党だけでなく、野党も、毎年、最低賃金の引き上げを訴えてきました。
最低賃金やそれに近い賃金で働く労働者が少なくない現状では、最低賃金の引き上げはそうした労働者の年収の増加につながると見られていました。
しかし、実際には、いくら最低賃金を引き上げたところで、年収の壁があるため、労働者は労働時間を短縮するだけで、年収全体では増加につながらない場合があったのです。
これは、雇い主側から見ても、実質的に労働力が減るということであり、特に零細・小零細企業の経営にとって足かせとなっていたのです。
このように、「低所得者は保険料を払わなくてもいいですよ」とか、「最低賃金を上げますよ」という言葉は、一見、耳障りがいいのですが、こうしたバラマキ的な政策は、私たち国民のメリットにならない場合が往々にしてあることが分かります。
制度設計の甘さを踏まえると、結局は、選挙用の誘い水だったと言われても仕方がないのではないでしょうか。