知人のビジネスマンが、ある製品を作成するために国内の縫製工場を探したところ、引受手が見つからず困っていました。
少し複雑な製品であるものの、20年ほど前ならば、どこでも引き受けてくれたにもかかわらず、今では縫える熟練工がほとんどいないとのことでした。
どうやら国内の縫製工場が次々に海外移転し、それに伴い国内の技術継承が上手く行っていないようです。
そのビジネスマンも、「今じゃ日本より中国のほうが、技術が高い」とこぼしていました。
話は変わって、先頃、政府は防衛力の抜本的な強化を打ち出し、その財源が焦点となっている感があります。
確かに、財源が無ければ、必要な防衛装備を買うことはできません。
しかし、いくらお金があったとしても、在庫が無かったり、製造が間に合わなかったりすれば、買うことができません。
国内では、国産兵器の開発や調達増が予想されますが、現在の防衛産業に余力はあまり無いのが実情です。
しかも、国内の防衛関連企業は次々に事業の縮小や打ち切りを決めています。
ですから、いくら防衛費を増やしても、研究開発を担う人材も不足している上に、調達数を増やそうとしても製造ラインを一朝一夕に増やせない現状があるのです。
一方、海外でもウクライナでの軍事衝突を契機に、世界中で兵器の需要が増えており、特に費用対効果が高いとされる兵器を製造するメーカーに注文が殺到し、引き渡しが遅れるケースが相次いでいます。
これでは、日本で必要な防衛力が揃うのはいつになるのか分かりません。
経済的に立ち行かない防衛産業にリソースをつぎ込むことに見切りをつけた日本企業に、その責任を帰する訳にはいきません。
自国を取り巻く情勢が年々緊迫していたにもかかわらず、適切に防衛力を増強してこなかった歴代政府によるツケが、今になって回ってきているのです。
防衛力を抜本的に強化するためには、海外からの兵器の調達と同時に、国内の防衛産業の重層的な強化が必要なのではないでしょうか。