今回の参院選では、各党が競うように最低賃金の大幅アップについて言及しています。
平均年収が400万円余りであるのに対し、現在の最低賃金930円で法定の1日8時間、週40時間で1年間働いても200万円弱なので、半分にも満たないことになります。
ですから、今の最低賃金の水準はあまりに低く感じられるので、最低賃金で働く労働者が少なくない現状では、「最低賃金を1500円に」などと言う公約は一見説得力があるように見えます。
しかし、最低賃金から算出される年収には、残業代や休日出勤手当などの変動する可能性のある手当、またボーナスなども含まれていないのです。
それらの賃金を含めると、最低賃金に近い水準で働いていても、実際は年収が200万円を大きく上回る労働者が少なくないのです。
これは、経営側の視点からすると、「最低賃金は法律で規定されている上に基本給だから、経営が厳しくなっても安易に下げられない。だから、先行きの見えない現状では、基本給を最低ラインにして、ボーナスなどで還元する」ということのようです。
これでは、いくら最低賃金を上げたとしても、景気が上向かない限り、経営側の人件費は決まっているので、ボーナスなどを減らすだけで、労働者の全体としての年収は政治の思惑通りには上がらないということです。
こうした事実があるにもかかわらず、今の与党も野党も、最低賃金を上げれば年収が比例して増えるかのように、有権者に対して耳当たりのよい言葉で訴えています。
しかし、実情を無視した最低賃金の上昇は、政府による統制であり、明らかに社会主義的な政策です。
統制経済は、戦時下など特殊な環境でしか機能しませんから、必ず弊害をもたらします。
今必要なのは、企業活動の足かせとなっている環境や雇用などの規制を逆に緩和して、自由に仕事を拡大できるようにすることです。
野党だけでなく与党も社会主義化する中で、資本主義の神髄である自助論の精神からの勤勉革命を訴えているのは幸福実現党だけです。