ウクライナの問題では、未だに不可解な部分があります。
それは、ロシアが自身の攻撃に一定の制約を設けているように見えることです。
典型的なのは、ウクライナ政府の中枢に物理的な攻撃をほとんど仕掛けていないことです。
また、誘導兵器による攻撃回数も、湾岸戦争やイラク戦争などと比べると明らかに少ない数です。
更には、機甲師団が対戦車兵器を持った歩兵と戦う手法も、第4次中東戦争以降にある程度確立されたにもかかわらず、ロシア軍はそうした手法を取っていないように見える部分が多々あります。
これらは一例にすぎませんが、おおかたの見方では、「それだけロシア軍の作戦がずさん」とか、「ロシア軍の兵站がひっ迫している証拠」などと考えられているようです。
しかし、ロシアにとってみれば、現時点で今回の戦闘はあくまでも「特別軍事作戦」であって「戦争」ではないと考えると、総力をつぎ込んでいないとも取れます。
また、ウクライナ政府側のメディア戦略とは裏腹に、民間人の犠牲を最小限に留めているようにも見えます。
いずれにせよ、長い国境線を抱えるロシアにとって、戦力を一カ所に集中させることは、安全保障上、できないのは明白です。
それでも、仮に前出のおおかたの見方が正しいとしても、ロシアは世界一の核兵器大国である訳ですから、核兵器を含めたトータルの戦力で見れば、決して「予想以上に弱い国」とか、「侮っていい国」ではありません。
にもかかわらず、バイデン大統領をはじめNATO加盟国の首脳は、ウクライナに次々と軍事支援の増大を決めています。
これは「核兵器なんて使えるはずがないと考えている」からなのでしょうか。
その反対に「追い詰めて核兵器を使用させようと挑発している」ようにも見えます。
欧米、それに日本のウクライナへの関わり方は、戦闘を早期に終わらせるというよりは、むしろ大きな戦争に拡大する雰囲気に満ちていると、私たちは気付くべきではないでしょうか。
【参考】:『ザ・リバティ6月号』https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2789