日本政府は欧米に追従する形でロシアに対する経済制裁を強化しています。
これを受けてロシアは北方領土問題や平和条約交渉が振り出しに戻ったとの認識を示すとともに、今年の日露漁業交渉も遅々として進んでいません。
また、貿易など民間のビジネスにも影響が出ています。
こうした事態に岸田首相は、原因は全てウクライナに侵攻したロシア側にあるとし、ロシアの対応が理不尽であると非難しています。
しかし、日本政府は、事実上の戦争状態にある片方の国に既に肩入れしている現状にあることを理解すべきではないでしょうか。
この「肩入れ」とは、ロシアに対する経済制裁だけではありません。
日本政府は、防弾チョッキや軍用ヘルメットなどの支援物資をウクライナに提供しています。
あくまでも殺傷用の兵器ではないので、戦闘に肩入れしていないとの立場ですが、多くの防衛装備品が含まれている事実に変わりありません。
つまり、日本が敵側に与しているとロシアから見られてもおかしくない状況なのです。
ですから、このまま日本が、ロシアへの制裁を強化し、その一方でウクライナを支援することは、ロシアとの敵対関係が加速するということを覚悟しなければなりません。
その際、考えなければならないのは、戦後、長い年月をかけて今まで築き上げてきた日露関係を台無しにして本当にいいのか、ロシアを敵にして本当にいいのかという点です。
もちろん、ウクライナは攻撃を受けた側であり、戦火にあるウクライナを人道支援することも大切ですが、「ウクライナが100%正しく、ロシアが100%悪である」という訳ではないことも知るべきではないでしょうか。
日本としては、ウクライナに感情的に肩入れをするのではなく、プラグマティックに大局的な観点で国益を考えることも重要ではないでしょうか。