ウクライナのゼレンスキー大統領が、各国の議会でオンライン演説を行っています。
ウクライナの窮状や支援の必要性について、その国の人々の感情に訴える形で演説をしています。
元喜劇俳優の面目躍如ということかもしれません。
ゼレンスキー氏は、就任当初、人気者ということで大統領になれたとの見方があり、実際、支持率が低迷していましたが、ロシアによる侵攻を契機に支持率が上がり、今や9割の国民から支持を得ているとされます。
戦時下のリーダーとして見事にウクライナ国民をまとめ上げた、その手腕を評価する声が日増しに高まっています。
ただ、同氏には懸念される面もあります。
日本の国会での演説では、日本の国内事情に配慮して踏み込んだ発言はありませんでしたが、他国の議会などでは、第三国が今回の戦争に直接関与することを促すような発言をしています。
例えば、現在の欧米による軍事支援は歩兵の携行兵器が中心ですが、ウクライナ側は戦闘機や中長距離対空ミサイルといった、より大型の兵器の供与を要請しています。
これは供与した国が軍事行動に直接参加したと見なされてもおかしくない状況を生じさせるリスクがあります。
また、例えば、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定も欧米に求めていますが、この設定を実効あるものにするためには、空軍力による管理が必要となるため、事実上の参戦を意味します。
つまり、ゼレンスキー氏の要求を額面通りに受けると、世界大戦を誘発する恐れがあるのです。
そう考えると、ゼレンスキー氏には、「こうすると、こうなる」という先を見通す思慮深さに欠ける印象があります。
実際、今回のロシアによる侵攻も、「ウクライナがNATO加盟を拙速に推し進めると、ロシアは国の存亡を左右するような安全保障上の脅威と感じる」ということが理解できていなかった可能性があります。
その意味では、政治家としての未熟さを指摘されても仕方ないのかもしれません。
政治は結果が全てです。
戦いの最中で指揮を執るゼレンスキー氏には敬意を表したいと思いますが、ウクライナ国民の惨状を目の当たりにすると、他に軍事衝突を避ける方法があったのではないかと悔やまれてなりません。