バイデン大統領は、ロシアに対する経済制裁を強化するために、原油やLNGなどのロシア産の化石燃料の輸入を全面的に禁止しました。
イギリスなどが追従する動きを見せる中、岸田首相は日本としてG7各国と足並みを揃える旨を表明したものの、禁輸措置には踏み切っていません。
ウクライナから日々伝えられる報道では、苦しむ市民の姿が映し出され、ロシアに対する反感が高まることで、制裁強化は当然との見方があります。
また、米国政府は、停戦に向けたロシア側の態度に変化の兆しがみられるとして、制裁強化の意義を強調しています。
しかし、ロシアにとって石油の輸出は生命線であり、プーチン大統領がソ連崩壊後、瀕死のロシアを救ったのも石油によるところが極めて大きいという事情もあります。
そうした中で、制裁強化として安易に石油の禁輸をすれば、ロシアを必要以上に追い込むことになりかねません。
石油が完全に禁輸されれば、ロシアは好むと好まざるとにかかわらず中国と関係を強化するしかなくなります。
仮に、中露の同盟に発展するようなことになれば、日本の安全保障にとっては最悪の事態となります。
しかも、世界のエネルギー市場が不安定化し、世界経済に与える影響は甚大となります。
むろん日本経済も無傷でいられることなどあり得ません。
ですから、たとえロシア産原油の割合は数%に過ぎないとは言え、日本として禁輸は見送るべきであると考えます。
ロシア産原油は、シーレーンに依存しない貴重なエネルギー源でもあることも理解すべきではないでしょうか。
日露関係が悪化すれば、原油を供給してほしくても売ってもらえない可能性もあるのです。
ここでロシアに対し恩を売ることは、将来、日本にとってもきっとプラスとなるはずです。
先般、日本は、ウクライナに対し防衛装備品である防弾チョッキなどを供与したことで、ある意味で一線を越えたと言えます。
石油の禁輸で更なる一線を越える事態は避けるべきと考えます。