プーチン大統領はウクライナ侵攻に踏み切った際に、「他に選択肢はなかった」と述べました(※)。
これに対し、戦争を正当化しているなどと批判の声が上がっています。
確かに、侵攻を最終的に決断したのはプーチン大統領と考えられるので、戦闘によって生じた犠牲や被害は、一義的には同氏に責任があるという見方ができます。
一方、選択肢がないほどに追い詰めた側には、責任が全くないと言えるのでしょうか。
ロシアは、対ロシアの軍事同盟とも言えるNATOの東方拡大をやめるよう欧米に要求していました。
長い国境を接するウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアにとって安全保障上の死活問題となるからです。
一方、NATOの中で取り分け米国は、NATOへの加盟はその国の主権に依存するという原理原則を盾に、このロシアの要求にほとんど聞く耳を持ちませんでした。
実際問題として、ウクライナがNATOに加盟してもしなくても、欧米の安全保障に大きな影響はないという見方があるにもかかわらずです。
ですから、米国がウクライナのNATO加盟を認めないと一言いえば、今回の侵攻は起きなかった可能性がありました。
かつて、日本が太平洋戦争に突き進んだ背景に、欧米のABCD包囲網により、やむなく開戦に至ったとの見方がありますし、当時のルーズベルト大統領が日本に戦端を切らせるように導いたとの説もあります。
今回のウクライナの件も、単にプーチン大統領の真意を見誤ったのか、それとも米国の深謀か、いずれにしても欧米の側に全く責任が無いという訳ではないのではないでしょうか。
※:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220225/k10013500481000.html