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2020/12/15【専守防衛の理想と現実】

 防衛省が、現行の対艦ミサイルを長射程化し、事実上の巡航ミサイルの導入を検討していることに対し、野党などから専守防衛を逸脱するとして反対論が上がっています。
 

 しかし、世界では各種ミサイルの長射程化が進んでいます。

 例えば、最新の中国海軍艦艇が装備する艦隊防空用のミサイルの射程距離は二百キロ以上とされます。

 これに対し、自衛隊機が装備する空対艦ミサイルの射程距離は百数十キロとされます。

 双方の索敵能力等に様々な要素があるものの、単純に考えれば自衛隊機は中国軍艦艇を攻撃できないことになります。
 

 こうした現実を踏まえて、防衛省が敵の射程外から攻撃できるいわゆるスタンドオフ兵器の導入を進めることは、抑止力を高め、かつ自衛隊員の安全を守るという意味でも当然のことと言えます。
 

 我が国は40年以上前にF-4戦闘機を導入する際、専守防衛に反するとして、空中給油装置や爆撃コンピュータを外したことがありますが、その後に導入された機種にはそれらの機能が付与されていたことから、当時の専守防衛論は空論だったことが分かります。
 

 今回も世界の用兵の変化に対応した非常にテクニカルな問題であり、政治が敵地攻撃にも使えるとして待ったをかけることは、言い掛かりに近いものがあります。

 中国や北朝鮮の兵器の進歩に対応しなければ、専守防衛さえもままならい現実があるのです。
 

 政治の役割は、「如何にして中国の機嫌を損ねないか」を考えることではなく、「如何にして日本の主権を守るか」を考えることではないでしょうか。