バイデン氏は、自身の政権が発足すると見越してその人事を進めています。
トランプ大統領は敗北を認めていませんが、仮にこのままバイデン政権へと移行するとしたら外交の基軸がどの辺りになるのか、人事に如実に表れているのではないでしょうか。
まず、国防長官ですが、元軍人のオースティン氏を指名する予定です。
同氏は、退役後間もないため就任には手続き上の課題がありますが、就任すれば黒人初の国防長官となります。
ただ、同氏は対中国の経験が乏しいので、バイデン氏が「中国が安全保障上の最大の脅威」と考えるのであれば、別の人事もありえたはずです。
しかし、バイデン氏は、黒人である同氏を登用することによって、人事の多様性を優先したと考えられます。
そして、各国との貿易交渉にあたる通商代表には、アジア系の女性弁護士であるタイ氏を指名する予定です。
同氏は、中国との貿易問題に精通し中国語も堪能とされます。
バイデン氏が、同氏を能力主義で登用したのであれば問題ありませんが、アジア系の女性を登用することで、ここでも人事の多様性を重視していることが伺えます。
この2人の人事を見ただけでも、バイデン氏が選挙中に約束した中国に対する厳しい姿勢の維持とは裏腹に、「人権問題は追及するものの、中国との軍事的な対立はほどほどにして、ビジネスパートナーとして共にやっていこう」という方向性が見えてきます。
これは、オバマ政権と同様に中国の覇権がますます拡大する流れであることを危惧せずにはいられません。