長年、小さな町工場の有限会社を営んでいる高齢の知人が、会社の相続問題で悩んでいます。
子供の一人が会社を引き継いでもいいと言ってくれたものの、会社の相続税が数千万円にも上り、とても払えないというのです。
非上場の有限会社であっても、後継者が何年も前に決まっていれば、非課税の範囲内で少しずつ社員権なりを譲渡できるのですが、急に会社の所有者が変わる場合は、高額の相続税を納めなければならないという問題が生じます。
会社名義の現金や有価証券が十分にない場合、会社の土地や設備を切り売りして現金化するという手段は現実的には難しいですし、税制上の評価額はその会社の実際の価値よりも高い場合もよくあることです。
こうした事態に対しては、国も支援制度を用意しているのですが、利用条件が厳しいためにあまり活用されていません。
自助努力でバブル崩壊やリーマンショックを乗り切り、高い技術力で日本を支えてきた町工場が、また一つ存続の危機にさらされています。
経営状態も黒字を維持しており、後継者が見つかったというのにです。
この一件を見るにつけ、格差固定の防止という相続税の議論とは、別次元の話のように思えてなりません。
やはり、日本の産業を守るためにも、持続的に法人税を納付するためにも、現在の高すぎる相続税は廃止を含め見直すべきではないでしょうか。