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2019/08/02【最低賃金の上昇で失業率も高くなる】

 厚生労働省の審議会で、2019年度の最低賃金の目安が全国平均で時給901円に決まりました。

 昨年度から27円の引き上げで、近年は毎年約3%のペースで上昇しています。
 

 しかし、日本経済を見てみると、GDPが毎年約3%のペースで上昇している訳でありませんし、企業も業績が毎年右肩上がりのところばかりではありません。

 ですから、今回の賃上げも実態を反映したというよりも、政治的な思惑が反映されたものと言えます。
 

 今後、最低賃金で従業員を雇用している企業、特に小規模零細企業や個人事業主の多くは、人件費負担が重くのしかかることになります。

 よって、人件費負担が限度を越えれば、必然的に従業員数を削減することになります。

 削減対象の従業員は気の毒ですが、削減した企業も大切な従業員が減るわけですから、製造能力や営業能力などが低下し、売り上げも落ち込むことになります。

 つまり、企業業績低迷の負のスパイラルに陥りかねません。
 

 にもかかわらず、最低賃金の上昇による弊害は、誰も責任を取ろうとしません。

 今回の審議会の委員は国民が選挙で選んだわけではありませんが、政府や政治家は「審議会の結論に従った」として責任を転嫁します。

 当の審議会も「審議会の結論をどのように実際の政治に結び付けるかは政府の責任である」として、結果に対する責任を持ちません。
 

 このように政府は、自らに都合のいい結論を得られるように審議会の委員を人選することで、批判をうまく避けながら、政策を動かしてきたのではないでしょうか。

 こうした無責任構造のツケを払わされるのが私たち国民です。

 不当に安い賃金で働かせることを防止する目的で最低賃金を設定する意義は認めますが、自民党が選挙に勝つための公約として、最低賃金を次々に上昇させることがもたらす結果は、失業率の上昇です。

 まずは景気回復を実感できるものとし、その結果として賃金上昇となることが健全ではないでしょうか。