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2013/06/07【棚上げ論は一見平和的に見えますが】

自民党の元国会議員で官房長官も務めた野中広務氏が、6月3日、訪中先の北京で記者会見を開き、1971年の日中国交正常化当時、尖閣諸島の領有権について「棚上げ」する日中の合意があったと述べました(※)。

これに先立つ2日には、シンガポールで開かれていたアジア安全保障会議で中国軍の高官が、尖閣諸島について棚上げすべきと発言していた直後だけに、野中氏の発言には中国政府の何らかの意図を感じざるを得ません。

もちろん日本政府は、野中氏の発言について即座に反論し、外交記録からもそうした事実はないとしています。

しかし、歴代の政権は、尖閣諸島について、中国の主張に対し明確な反対の姿勢を示さない曖昧な態度に終始してきたツケが回ってきたとも言えます。

野中氏自身は、帰国後、中国に利用されたわけではないとしていますが、少なくとも同氏の発言は、正当性の無い領有権の主張を繰り返す中国側を利していることは明らかです。

北京での記者会見で、同氏は「中日」という言葉を使用していました。

中国側が日本と中国の事柄について「中日」という言葉を使うのなら分かりますが、日本人である野中氏が「日中」ではなく「中日」という言葉を使うことからも、同氏のスタンスが分かります。

棚上げ論は一見平和的に見えますが、中国の実効支配を一歩進めることと同義です。

野中氏は訪中先で、「日本には中国と戦争をしたいと思う人間はいない」旨を述べたとされていますが、逆に中国には「日本に武力行使すべき」と考える人間が大勢います。

こうした中で中国に阿ることは、日本が中国の属国に近づくことを意味します。

共産党の一党独裁国家である中国が侵略したチベットやウイグルなどには、現在も自由が存在せず厳しい弾圧が行われていることを忘れてはなりません。

※:6月3日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/world/news/130603/chn13060323290016-n1.htm