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2012/02/17【財務省の“統計のトリック”には注意が必要】

少し前になりますが、2月3日、財務省は、租税負担率と社会保障負担率を合計した割合を示す「国民負担率」は2012年度に39.9%になる見通しだと発表しました(※1)。

この国民負担率は、政府が増税の根拠を示す際に「国際的にみて日本は国民負担率が低いから、まだ増税の余地がある」という論法でよく用いられるものです。財務省のホームページ(※2)では「国民負担率の国際比較」と題し、国際比較のグラフと共に「日本の国民負担率は、主要先進国と比べると低い水準にあります」と説明しています。このグラフによれば、国民負担率は、日本38.8%、米国32.5%、英国46.8%、ドイツ52.0%、スウェーデン59.0%、フランス61.1%となっており、確かに、日本は米国に次いで低い値です。

しかし、ここには「統計のトリック」があります。そのトリックの一つは、租税負担と社会保障負担の合計の「国民所得」に対する割合を「国民負担率」としていることです。国際標準では「国民負担率」は「国民所得に対する割合」ではなく、「GDPに対する割合」が用いられています。「対国民所得比」を用いると、分母に間接税が含まれないため、間接税の割合が高い欧米の国は相対的に負担率が高く、日本は相対的に負担率が低く見えるのです。実際に「対GDP比」の「国民負担率」で見ると、日本28.1%、米国26.4%、英国37.3%、ドイツ39.3%、スウェーデン43.7%、フランス45.2%となり、日本と欧米の差は縮まります。

二つめは、税金負担と社会保障負担に財政赤字額を加えた割合である「潜在的国民負担率」(対GDP比)を見せていない点です。「将来の税金」とも言える財政赤字を加えた「潜在的国民負担率」で比較すると、日本36.2%、米国32.3%英国42.1%、ドイツ39.3%、スウェーデン43.7%、フランス48.5%となり、日本と欧米との差は更に縮まります。

このように財務省は、「統計のトリック」を駆使して、世論を「増税やむなし」へと導こうとしています。増税に関して政府の発表を鵜呑みにしてはいけないことがわかります。

※1:2月3日付朝日新聞http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201202030147.html

※2:http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei/03.htm#034