トランプ大統領は、中距離核戦力全廃条約(INF)から離脱することを正式に表明しました。
INFは、米ソ両国が地上配備型の中距離核ミサイルを全廃することを定めたもので、1970年代から80年代にかけて主にヨーロッパでの核戦争の危機の高まりを受けて結ばれたものです。
INFからの離脱表明を受けて、ヨーロッパ諸国からは、核戦争の脅威が再びもたらされるとして、トランプ大統領に対する批判が強まっています。
しかし、INFはあくまで地上配備型の中距離核ミサイルを対象としたものであって、米露両国は既に中距離核戦力相当する航空機や艦艇から発射する巡航ミサイルを多数配備しています。
従って、INFが破棄されたからといって、ヨーロッパの安全保障環境が劇的に変化する訳ではありません。
それよりも現実的な懸念は、INFに縛られない中国の軍拡です。
トランプ大統領がINFからの離脱を決定した要因はここにあると見られています。
また、中国の中距離核戦力への懸念は、実はロシアも共有しているのです。
そして、中国が日本に向けている核ミサイルは、まさにこの中距離核戦力なのです。
トランプ大統領もプーチン大統領も、中国を含めた新たな規制の枠組みの必要性を認めています。
日本も、“全ての”中距離核戦力を対象とした規制の枠組み構築に向けて、米露の連携を後押し、中国がその枠組みに加わるよう米露とともに包囲網を形成していくべきと考えます。
もしも、中国がそうした枠組みに加わらないのならば、日本も力の均衡の観点から、中距離核戦力に相当する巡航ミサイルを導入することも考える必要があるのではないでしょうか。