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2018/12/11【“福島安全宣言”を出すべき理由】

 長崎の原爆投下で、国が定める被爆地域の外にいた人も被爆者と認めるよう訴えていた裁判で、福岡地裁は原告の訴えを退けました(※)。
 

 判決の根拠として裁判長は、「年間100ミリシーベルト以下の被爆で健康被害が出るとする科学的知見が確立しているとは認められない」ことをあげています。
 

 この考え方を福島第一原発の事故に当てはめると、福島県内のほとんどの地域が年間100ミリシーベルト以下ということになり、危険性があるのは原発構内など一部に留まることになります。
 

 100ミリシーベルト以下では人体への影響が認められないとする考え方は、国連科学委員会、世界保健機関(WHO)、国際放射線防護委員会、国際原子力機関(IAEA)なども取っています。

 また、事故後の政府の内閣官房による「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」の報告書でも、この考え方に基づき「年間100ミリシーベルト以下の被ばく線量では、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく、放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しい」としています。
 

 従って、政府が進める除染目標年間1ミリシーベルト以下という数字も、如何に過剰かということが分かります。

 年間被ばく線量がゼロでない限り安心できないという気持ちは分からないでもありませんが、原発事故が無くても自然界には様々な放射線が存在し、年間1ミリシーベルトを超える地域はあちこちに存在しています。

 ですから、こうした除染の数値目標がある限り、福島は危険というイメージは拭えません。
 

 原発事故の避難は現在も続いており多くの方がご苦労されています。

 政府は、今回の判決でも示された通り、科学的根拠に基づいて福島県全域での安全宣言を発出し、早急に避難指示を見直して帰還許可を出すべきではないでしょうか。

 
 ※:12月10日付NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20181210/k10011742101000.html