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2018/07/03【島民や旅行者の生命を守るという観点で】

 小笠原諸島返還50周年に当たり、父島に飛行場を作る計画がここに来て注目を集めています。

 現在、小笠原諸島に飛行場は無く、父島と東京の竹芝桟橋の間に週1便の定期船があるのみで、所要時間は片道約24時間かかります。
 

 観光振興だけでなく、島民の生活の向上のために空路の開設が度々検討されましたが、空港建設に伴う環境破壊が危惧され、開設計画はとん挫した経緯があります。

 
 今回、東京都の小池知事が、世界遺産でもある小笠原の自然への影響を最小限に抑えるために1,000メートル以下の滑走路の建設を検討していることを明らかにしました。

 しかし、1,000メートル以下の滑走路は、民間旅客機が就航するには異例に短いため、就航できる機材が限られます。

 しかも、羽田空港からと想定すると、1000キロ以上離れた父島で、万一、着陸できない場合、ダイバート可能な空港が更に約250キロ離れた硫黄島しかないため、長い航続距離が求められるので、適した機材は更に絞られます。

 
 現在、小笠原諸島内で対応できない急患等が発生した場合、海上自衛隊の救難飛行艇(US-2)の派遣を要請しています。

 US-2は高い性能を有し、運用する隊員の練度も高いのですが、飛行艇の特性上、波の状態によっても運航の可否が左右されてしまいます。

 そこで、滑走路があれば、水陸両用のUS-2の運用の柔軟性が高まります。

 
 ただ、US-2に民間用の旅客型はありません。

 US-2の製造メーカは旅客型を提案したことがありますが、小笠原路線へ就航を前提に開発を進める手もあります。

 航空産業は、日本の未来の主力産業の1つとして育てる必要がありますが、旅客機の分野で欧米の2大巨頭にすぐに追いつくことは困難なので、ニッチな分野で実績を重ねることも重要です。

 
 いずれにせよ、島民や旅行者の生命を守るという観点からは、環境負荷を強いたとしても十分な長さの滑走路を建設することを検討する余地はあるのではないでしょうか。