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2018/05/31【嘉手納基地の航空戦力増強の背景は】

 米軍はステルス戦闘機「F-22」計14機を、沖縄県の嘉手納基地に5月30日から1か月間の予定で暫定配備することを日本側に伝えてきたということです(※)。

 6月12日で再度調整している米朝首脳会談の期間中だけに、北朝鮮に対する圧力を強化する一環と見られています。
 

 
 しかし、F-22の配備は北朝鮮をだけを睨んだものなのでしょうか。

 F-22は対戦闘機戦闘を主任務とする世界最強と言われる戦闘機です。

 北朝鮮の航空戦力を考えれば、ステルス戦闘機でなくても、既存の米軍F-15、F-16、FA-18などをもってしても圧倒できるはずです。

 
 また、ステルス性能を生かして地上目標の攻撃を行うとしても、対地兵装の搭載量が少ない上に高価なF-22を投入することにどれほどの意義があるのか疑問です。

 しかも、地上目標の先制攻撃には、巡航ミサイルに加え既に岩国基地に配備されているステルス戦闘機F-35があります。

 にもかかわらず、F-22を地上攻撃作戦に投入するのであれば、先制攻撃時に少しでも多くの目標を叩く必要があるということなのでしょうか。
 

 もちろんそうしたことも考えられますが、やはり、中国の動きを牽制する狙いも大きいのではないでしょうか。

 米国のマティス国防長官は、29日、2015年に習近平主席が訪米した際に、南シナ海の中国の人工島について軍事化しないと習主席が約束したにもかかわらず、その後、軍事拠点化を進めているとし中国を強く批判しています。

 マティス長官の批判は正論であり、国際法を無視して覇権拡大を続ける中国を容認しないという米国の強い意志を感じます。
 

 
 実際、中国が配備を進めるロシア製戦闘機「Su-35」や、中国国産のステルス戦闘機「J-20」が増強されれば、日米の航空優勢が揺らぐとの懸念があります。

 そうした懸念に対処するためのF-22の暫定配備ということも考えられます。
 

 いずれにせよ、日本防衛の要であると同時に、対中国、対北朝鮮を見据えたキーストーンでもある嘉手納基地の動きには緊迫した極東情勢が色濃く反映されます。

 ※:5月30日付産経新聞http://www.sankei.com/politics/news/180530/plt1805300024-n1.html