ルクセンブルクのアンリ大公が国賓として来日しています。
ルクセンブルクは、北大西洋条約機構の加盟国ですが、かつては非武装中立を宣言していた歴史があります。
「非武装中立国」というと戦争とは無縁の平和な国というイメージがありますが、ルクセンブルクは、非武装中立を宣言していた第一次世界大戦と第二次世界大戦の際に、それぞれドイツから侵略を受けています。
中でも第二次世界大戦の際は、ナチスドイツの侵略に抵抗するなどして、多くのルクセンブルク人が処刑されたり投獄されたりしています。
このルクセンブルクの例からは、「いくら非武装中立を宣言して巧みに外交を展開しようとしても、野心を持った隣国が存在すれば、その平和や自由は保障できない」という教訓が得られます。
一方、中米のコスタリカは、現在も非武装中立政策を貫いています。
確かに、コスタリカの周辺には、野心を持った軍事的な強国が存在しているとは言えないので、一見、平和で、経済的にも余裕があるように見えます。
しかし、コスタリカの安全保障は、事実上、米国など国際社会が担っています。
実際、こうした認識はコスタリカ国民の間にも少なからずあるようです。
また、コスタリカでは、万一に備えて、憲法には徴兵できる旨が既定されています。
有事の際は体を張って国を守るという殊勝な心掛けに感じますが、現代の高度に専門化された軍隊に対して、徴兵によるにわか作りの軍隊でどこまで対抗できるのかその効果は疑問です。
このように、非武装中立という理想は理解できない訳ではありませんが、現実が支配する国際社会においては、非武装中立政策は多くの犠牲を強いられる可能性があることを理解しなければなりません。