安倍首相は、“賃上げ”に積極的な企業に対し、減税する意向を示しました。
政府は、幾つかの経済指標を挙げてアベノミクスの成果を強調していますが、好景気を実感している国民が少ないことから、賃上げを促すことで景気回復を実感してもらいたいという思惑が感じられます。
これに対し、中小企業のある経営者からは、「従業員に経済的に豊かになってもらいたいという思いはあるが、現在の経営環境ではこれ以上、賃上げを実施することは難しい。政府が賃上げに対し税制で支援するというのであれば、賃上げによるコスト上昇分と、減税額がどの程度になるかが賃上げ実施の一つの判断基準になる」と話していました。
ただ、実際は、賃上げによるコスト上昇分を埋めるほどの減税が行われることは無いと推測されるので、同経営者は、「既に人手不足から労働市場における賃金は上昇傾向にある。そうした中で、政府が市場原理とは別に賃上げ圧力を高めるのであれば、ますます経営を圧迫する恐れがある」とも話していました。
論理的には、確かに、賃上げによって、労働者のモチベーションが高まったり、優秀な人材を確保できたりすれば、売り上げの増加に繋がり、それが新たな賃上げを促し、経営の好循環が生まれるでしょう。
しかし、実際は、賃上げで経営が改善する企業は多くありません。
利益を上げていながらそれに見合った賃金を支給していない企業は論外ですが、多くの場合、企業には賃金を上げたくても上げられない理由があります。
賃上げを促すための王道は、経済を好況に導くことです。
そのための環境を整えることが政府に求められる役割のはずです。
ですから政府が行うべき政策は、消費を冷え込ませる消費税の増税を撤回し、法人税の大幅な減税を実施するとともに、規制緩和を進めることで、企業の自由な経営を支援すべきではないでしょうか。
消費増税を前提に、いくら景気刺激策を実施しても、その効果は上がりません。