財務省は、「ビール」と「発泡酒」、それにいわゆる「第3のビール」の税率を一般化する検討を行っています(※)。
現在は、麦芽の比率などによって税率が異なっており、一本化されれば、ビールは減税、発泡酒と第3のビールは増税となる見込みです。
確かに、複雑な税制によって生まれる事務処理の煩雑さは非効率的なので、税制は可能な限り簡素であることが望ましいと考えれば、似たような飲料で税率を統一することは、一見、方向性として正しいように見えます。
しかし、ビールに代わって発泡酒や第3のビールの市場が拡大し、税収が上がらないので、税制を変えて税収増を図りたいと考えているのであれば問題です。
なぜなら、低価格な商品を求める消費者のニーズに応じるため、麦芽の比率が低くてもビールの味に近づける工夫や、麦芽の比率の低さを逆に生かした商品開発といった、企業努力を否定することに繋がりかねないからです。
こうした税制の変更は他にもあります。
例えば、日本独自の規格である軽自動車は、エンジンの排気量や車体の大きさが制限される代わりに、税率が低く抑えられています。
自動車メーカーは、厳しい制約の中で軽自動車を発展させ、小型自動車や普通自動車に負けない魅力を備えるに至りシェアを拡大してきました。
しかし、度重なる制度変更で、軽自動車と他の自動車の税の差は縮まってきています。
最近では、海外メーカーなどから、軽自動車制度は関税障壁であるとして撤廃を求める動きもありますが、技術のガラパゴス化と言われながらも、日本メーカー独自の技術力向上に寄与してきたことは間違いありません。
重税国家の考え方は、「税は取れるところから取る」と言うことかもしれませんが、民間の活力を最大限に発揮させ、自由の中から繁栄を得るには、税制は可能な限り単純に、そして税率は低く抑えることが、国家として望ましい姿ではないでしょうか。
※:11月21日付NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20161121/k10010776651000.html?utm_int=detail_contents_news-related-auto_001