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2016/04/24【オーストラリア潜水艦調達の続報】

 オーストラリアの潜水艦調達に関し日本の脱落が報じられた件で、オーストラリア当局は情報漏えいの疑いで捜査を開始しました。
 

 武器の調達と言うもっとも機密性の高い情報が、正式発表前に漏れていたとすれば、オーストラリアの安全保障にとって由々しき事態です。
この漏えいが、ハッキングなど外部による犯行であれば政府の管理体制が問われますし、政府内部の人間が関与していたのであれば事態はより深刻であり、その人物が何らかの不満を持っていることを示唆するものです。

 その不満とは何でしょうか。
以前のこのブログでも触れましたが、性能や運用実績、同盟国である米国との兵器システム上連携などを考えれば、日本が提案している潜水艦が選ばれるのが順当と見られていました。
 

 しかし、ここに来てターンブル首相は、「雇用や経済成長が明確になるよう豪州にとって正しい決定を行う」と述べ(※)、潜水艦の調達は安全保障よりも経済を優先するとの姿勢が鮮明になっています。
日本の潜水艦は、ライバルの独仏よりも現地での建造比率が低いとされ、経済を優先する現政権の政治的な介入が、潜水艦調達に関わる安全保障の担当者の不満に繋がった可能性も考えられます。

 オーストラリアの潜水艦調達で、日本の潜水艦を除外することは、中国の意向に沿うものです。
もしも、中国の要求に容易に阿るような政権であれば、潜水艦の選定にあたって提供している日本の虎の子の潜水艦の機密情報が、オーストラリア経由で中国に流出する事態も考えておく必要があるかもしれません。

 いずれにせよ、安全保障を軽んじて、覇権的な姿勢が明確な一党独裁国家との関係を強化するということは、自身の自由や民主主義的な価値観を将来的に制限することに繋がるということを心得ておく必要があるのではないでしょうか。

※:4月23日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/20160422-OYT1T50217.html