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2016/02/05【中国に企業の先端技術が流出する懸念が】

 中国の化学大手である中国化工集団は、農薬の世界最大手であるスイスのシンジェンタ社を買収すると発表しました(※1)。
実現すれば中国企業による過去最大の海外企業買収となります。
中国化工集団としてはシンジェンタ社の持つ先端技術やブランド力を獲得することなどが狙いと見られ、シンジェンタ社としては中国企業の資本力の獲得や中国市場での展開を優位に進めたい思惑があるようです。

 しかし、国有企業である中国化工集団による買収で、シンジェンタ社の技術が流出する懸念が聞こえてきます。

 一方、日本では、未だ経営再建の目途が立たない電機大手シャープが、台湾の電子機器大手である鴻海(ホンハイ)精密工業と買収を前提に優先して交渉することを決めたと発表しました(※2)。

 シャープは、日本政府と民間が出資している官民ファンドである産業革新機構とも再建について交渉していましたが、最終的に支援額が大きい鴻海との交渉を優先した格好です。

 産業革新機構は、シャープが持つ高い液晶技術の海外流出を防ぐために、国内の支援による再生を目指していましたが、シャープ側は鴻海の参加になったとしても技術が流出することは無い旨の話をしています。

 ただ、鴻海は台湾企業と言っても、生産の多くを中国本土で行っており、シャープの技術が中国に流出する懸念を払拭できないのではないでしょうか。

 企業が国境を越えてM&Aを行うことは、現在では企業活動として当たり前のことです。
しかし、こと中国が絡む案件となると、企業としてはもっと慎重になるべきであると考えます。
中国企業の中には、中国人民解放軍との関係が指摘されている会社が多数あり、その関係の実態は不透明です。
日本をはじめとする海外企業の持つ高い技術力が、中国の軍事や外交に利用されることが懸念されます。

※1:2月3日付日本経済新聞朝刊
※2:2月4日付NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20160204/k10010397001000.html