タイ王国で少し気になる動きがありました。
タイ海軍が、中国製の潜水艦3隻を購入するとの方針を発表しました(※)。
タイ王国軍は、ハリアー攻撃機を搭載した航空母艦を運用するなど、地域では有数の軍事力を保有しています。
もともとタイ王国軍は、米国やヨーロッパ製の兵器を中心に運用しており、西側諸国との関係が深い軍隊でした。
旧ソビエト製や中国製の兵器も装備していますが、比較的簡易な兵器に留まっていました。
しかし、近年、タイ王国軍は民主化を求める欧米と距離を取るかのように、中国との関係を強めており、潜水艦など高度なシステムを持つ兵器を中国から調達するようになっています。
中国がタイ王国軍への影響を強めるということは、地域の安全保障にも影響を与えます。
タイは、中国が領有権の主張を強めている南沙諸島に関して、中国と係争している問題はありません。
中国とタイの関係強化は、中国と係争しているフィリピンやベトナムなどへの牽制になるのです。
また、タイは、地理的に日本にとってのシーレーンに近いことも忘れてはなりません。
更に、欧米と関係の深いタイ王国軍が、中国との関係強化に舵を切った訳ですから、欧米の軍事技術が中国に流出する懸念もあります。
タイ王国軍の装備は、古いものや中古品が多いため、中国にとって軍事的にどの程度価値があるのか判断しかねますが、タイ王国軍の装備に中国が容易にアクセスできるのは確かなはずです。
タイは、昨年のクーデターで軍が政権を掌握し軍政が敷かれていますが、国際社会が民主化を求めて圧力を強めれば、中国などとの関係が強まるというジレンマがあります。
日本は、天皇制と民主主義の両立の見本を示しつつ、親日国タイの民主化を支援していく必要があるのではないでしょうか。
※:7月2日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/world/20150702-OYT1T50120.html?from=ytop_main6