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2014/12/29【次世代産業を育てる上での参考事例】

 空爆作戦に参加していたヨルダン軍のF-16戦闘機が相手方の支配地域で墜落し、パイロット一人が拘束されました(※1)。

 空爆作戦では、その効果や誤爆が問題となりますが、同時にパイロットの命をどう守るかといった問題があります。
更に、そもそも高度な対空兵装を持たないゲリラに対して、数十億円もする戦闘機を投入することは経済的に割に合わないのではないかといった問題があります。

 パイロットの命や経済性の問題は、今後、無人機が有人機に取って代わることにより解消するかもしれませんが、無人機の運用には制限があるのが現状であり、全ての有人機に取って代わるにはまだまだ時間がかかりそうです。

 そこで、米テキストロン社からスコーピオンと呼ばれる機体が提案されています(※2)。
一昔前までは、対戦闘機戦闘など防空や制空を主任務とする「戦闘機」の他に、対地上攻撃を主任務とする「攻撃機」というものがありました。
しかし、現代では、それらの任務を両方こなせる「マルチロールファイター」と呼ばれる戦闘機が、効率的であるとして主流となっています。
前出のF-16はこのマルチロールファイターに相当します。
マルチロールファイターは、対戦闘機戦闘を行う上で、高度な電子機器と高性能なエンジンなどが必要であるため、必然的に高価な機体となってしまいます。
そこで、対戦闘機戦闘は限定的ながら、対地攻撃をこなせる安価な機体としてスコーピオンは提案されているのです。
こうした機体は、従来から練習機の派生型として多数ありましたが、スコーピオンは練習機の派生型という位置づけではありません。

 日本においては、現行の防衛の枠組み上、スコーピオンのような機体は必ずしも必要ないかもしれませんが、見習うべきはテキストロン社という一民間企業が独自に開発して提案している点です。
先に武器輸出三原則が見直されましたが、航空宇宙産業を日本の次世代基幹産業の一つとして育てていくために、参考となる事例ではないでしょうか。

※1:12月25日付産経新聞http://www.sankei.com/world/news/141225/wor1412250029-n1.html
※2:テキストロン社ニュースリリースhttp://investor.textron.com/newsroom/news-releases/press-release-details/2014/Textron-AirLands-Scorpion-to-Make-International-Debut-at-The-Royal-International-Air-Tattoo-and-Farnborough-International-Air-Show-in-July/default.aspx