東大の教授が、軍事研究を行わないとする学内の規定に反するとして、自衛隊からの協力要請を断っていたとの報道がありました(※)。
自衛隊では、現在、既存の旧式化したC-1やC-130に代わる輸送機としてXC-2の開発を行っています。
将来的にC-2として配備される予定のこの機体は、開発段階で機体の強度不足が判明し、開発スケジュールが2年程度遅れる見通しとなっています。
こうした事態に、防衛省は部外の専門家に協力を要請したのですが、大学を管轄する文科省は、学問への不介入の見地から、東大側の意向を尊重するとの立場です。
しかし、独立行政法人とはいえ日本の最高学府である東大ですので、国益の観点からも自衛隊への協力の是非を判断してもいいのではないでしょうか。
中国の力を背景とした海洋進出がはっきりしている状況下で、所管するエリアが広大であるにもかかわらず、限られた防衛力しか持たない自衛隊にとって、必要な戦力を迅速に展開できる輸送機は必須とも言える装備です。XC-2の開発の遅延は、そのまま抑止力の低下に繋がってしまうのです。
また、XC-2は、非武装の輸送機であることなどから民間への転用も視野に入れていることなどからも分かるように、現在では、技術的に軍事と非軍事の境界が必ずしも明確ではありません。ですから、軍事研究を行わないとする規定を厳格に運用すれば、対象となる学問の領域が狭まってしまうことになってしまいます。
軍事技術はそれを用いる人間によって、侵略の道具となることもあれば、侵略から人々を守る道具ともなるのです。日本のおかれた状況を踏まえれば、XC-2の開発は、国民の命や安全を守ることに資するのですから、東大には柔軟な判断をして頂きたいと考えます。
※:7月6日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140706/plc14070609450004-n1.htm