米国海軍が主催して2年に一度ハワイ沖で行っている多国間の軍事演習(リムパック)に、初めて中国軍が参加することになったとのことです(※)。
リムパックは、1970年代に始まり、もともとは東西冷戦時にソ連軍を牽制する意味合いの強いものでしたが、前回、初めてロシア軍が参加したにもかかわらず、中国軍が招かれなかったことに中国が反発していました。
そこで、米軍としては、米中が進める軍事交流の一環で中国を参加させ、信頼関係を構築して偶発的な衝突を回避する狙いがあるようです。
確かに中国軍は、先の海上自衛隊の護衛艦に対する射撃用レーダーロックオン事件でもわかるように、他の先進国に比べて統制のとれていない軍隊なので、不測の事態を避ける意味でこうした軍事交流を行うことは必要かもしれません。
しかし、中国が潜在的に対抗勢力と見なす各国の一線級の艦艇が集まるリムパックに、中国軍が参加することは、中国にとって軍事的に得るものが大きいはずです。
中国海軍は、近年、遠洋での作戦能力を大幅に増強させており、初の空母も就役させました。
こうした中国海軍が想定している重要な任務は、有事の際、日本列島から台湾に至るいわゆる「第一列島線」を突破することにあります。
従って、リムパックへの参加で、こちらの手の内をさらけ出すようなことは厳に慎まなければなりません。
また、米国の国防予算の大幅な削減や米国の民主党内の親中的な勢力の影響で、米中の軍事交流が加速するようなことがあれば、日本にとって日米同盟が有名無実化する恐れもあります。
米軍も、今回のリンパックでの中国軍の参加では、災害対応訓練に限定するようですが、日本としては今回のような動きには十分警戒する必要があります。
※:3月23日付産経新聞http://sankei.jp.msn.com/world/news/130323/amr13032308460001-n1.htm