中国政府は、近年、日本の尖閣諸島に対し、自国の領土であると主張し、領海侵犯などの既成事実を積み重ねています。
更に、5月13日に、日中韓首脳会談で、温首相は新疆ウイグル自治区の問題と尖閣諸島の問題を並べ、「中国の核心的利益と重大な懸案事項を尊重するよう(日本側に)求めた」とのことです(※)。
温首相のこの発言は、「尖閣諸島も中国の核心的利益である」とも取れる表現であり、こうした表現をあえて使うことにより、中国の尖閣諸島領有を一段と強く主張して日本を牽制したものと思われます。
この中国政府の言う「核心的利益」とは、中国政府が国益上譲れないという強い領有の意思を表すときに使う外交用語であり、これまでは、台湾、チベット、ウイグル等に限定して用いていたものです。
中国政府は、台湾についても、統一のために武力行使も排除しない姿勢ですが、中国首脳が「核心的利益」を尖閣諸島に対して使用したとすれば、それは、尖閣諸島に対する「武力行使宣言」がなされたことと同義になります。
しかし、民主党政権は従来から、中国を過度に刺激してはいけないとして、断固とした抗議の姿勢を示すことをしないばかりか、尖閣諸島を含めた先島諸島への最低限の防衛強化さえ怠ってきました。
防衛強化は、戦争の危険性を増すとする意見もありますが、現実はそう簡単ではありません。
台湾が独立を保っているのは、一定レベルの防衛力を保持していることが一因となっています。
脆弱ともいえる自衛隊の配備状況と、近年の中国人民解放軍の海軍力や空軍力を見れば、米軍のプレゼンスが一段と弱まれば、尖閣諸島をはじめ沖縄は一党独裁国家である中国のものとなる可能性が高まります。
現在の尖閣諸島の状況は、先のフォークランド紛争と似ている部分もあります。
フォークランド諸島にイギリス軍の艦船が配備されていなかったことが、アルゼンチン側に武力侵攻を踏み切らせる一因となりました。
日本も、こうした教訓に学んで、自衛隊の護衛艦を南西諸島に配備し、尖閣諸島周辺海域のパトロールを強化し、早急に尖閣諸島の実効支配を確実なものとすべきです。
※:5月14日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120514-OYT1T00383.htm