1月16日、福島県二本松市内の3階建て賃貸マンションで、放射性物質に汚染されたコンクリートが使われ、マンション室内で高い放射線量を計測したと各紙が報道しています。
各紙は専門家の意見として「取り壊しが一番確実」とし、住民の声として「賠償してもらうしかない」などと伝え、大きな波紋を呼んでいます。
このマンションのコンクリートには、福島第一原発からの放射性物質が高い濃度で降り注いだとされる、福島県浪江町の砕石場から搬出された石が使われており、昨年9月に建設されたマンションの1階室内での放射線量は毎時約1.2マイクロシーベルトであったとのことです。
ここで、この毎時1.2マイクロシーベルトという数字はどれくらい危険な数字なのでしょうか。マンションの放射能汚染に関して、海外で先例があります。1982年に台湾で建てられた大規模マンションの鉄筋に放射性物質であるコバルト60が混じっており、室内の放射線量が高いことが1992年になって発覚しました。翌1983年の時点で1年間居住していた人たちは平均で70ミリシーベルト以上被曝し、高いレベルの人では1,000人が平均500ミリシーベルト以上に達していたとのことです。
この台湾のマンションの居住者は約10,000人ですが、建設20年後の調査では、ガン死亡者は7人だったとのことです。この地域の通常のガン死亡率で計算すれば200人以上いなければならないそうですが、逆にガン患者が激減したということになっています。これは、一定レベルの放射線ならば人体に良い影響を与える、ラドン温泉などで知られる“ホルミシス効果”とみられます。
二本松市内のマンションの放射線量を年間で換算すると、10ミリシーベルト程度です。各紙も、記事の隅に小さく「健康被害が出るレベルではない」と書いていますが、もっと強調すべきではないでしょうか。このマンションの住民の方の心中を察するに余りありますが、マスコミも不安をあおるような報道の仕方は見直すべきです。
また、放射線防護学の第一人者である札幌医大の高田教授によると、そもそも「一生に受ける放射線量」という考え方にはほとんど意味がないそうです。例えば、今月に10ミリシーベルト、来月に同じく10ミリシーベルトを受けても、来月の皮膚は今月の10ミリシーベルトを覚えていないとのことです。実際に問題なのは、その年に、あるいはその月にどの程度の線量を受けるかということなのだそうです。
従って、今回のような低線量の放射線は、過度に心配する必要がないとも考えられます。