南アフリカで開かれていた「国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)」が、12月11日に閉幕しました(※)。この会議は、地球温暖化の原因とされるCO2を国際的に削減していく事を目的としたもので、2012年末で期限切れとなる京都議定書の次の枠組みの構築が焦点となっていました。今回採択された「ダーバン合意」は、2013年以降も京都議定書を延長し、2020年に新たな法的枠組みを発効させることなどを盛り込んでいますが、2013年以降、事実上、日本を含むほとんどの国が削減義務のない状態となります。
そもそも、地球温暖化の原因がCO2であるとする説は、一つの仮説に過ぎません。S・フレッド・シンガー/デニス・T・エイヴァリー共著の『地球温暖化は止まらない』によれば、「CO2による温暖化説」には何一つ証拠がないうえ、逆に、温暖化は別の原因によるものであることを示す研究結果が、100例以上列挙されています。例えば、「地球の温暖化は1500年周期で、過去100万年で600回起きている」とか、「最近の地球温暖化は1850年から始まっている。しかしCO2による温暖化なら1940年から始まるはずだ。実際には1940~75年までCO2は大量に増えたのに温度は下がり続け、76年から温暖化がまた始まっている」などの指摘があります。つまり、温暖化は昔から繰り返し起きている自然現象であるというのです。
また、12月12日付のウォールストリート・ジャーナルで、コペンハーゲン・コンセンサス研究所のビョルン・ロンボルグ所長は、CO2削減よりも温暖化に適応することを真剣に考えるべきだと論じています。同所長は、「2050年までにCO2を1990年比で50%削ったとしても、地球の平均気温は0.1℃ほどしか下がらず、無視できる数値である。温暖化の影響から人々を助けたいと本当に思っているなら、取り組むべきはCO2削減ではなく、温暖化にいかに順応するかである」とし、例として「途上国ほど、温暖化による影響を受けやすい。温暖化でハリケーンが強くなると予想されるなら、CO2削減よりも堤防や遊水地の整備などに取り組まなければならない。」「気温上昇とともに増加が予想されるマラリアにしても、必要なのはCO2削減ではなく蚊帳などによる予防と医学的な治療であり、ここでも問題はいかに順応するかだ。」などと述べています。
食糧生産の面では、大気中のCO2濃度が増加すると植物の光合成が活発になり、穀物の収穫量が増えるとの予測があります。独立行政法人農業技術研究所の実験では、現在のCO2濃度(約380ppm)を約200ppm増加させた水田で、米の収穫量が約9%増加したとしています。同研究所のサイトには、CO2濃度が倍増すると作物の収穫が平均33%増えると推定した研究も紹介されていました。温暖化やCO2増加は、今後の人口増による食糧問題を解決するためには、むしろ好都合のようです。
このように、地球温暖化は大きな自然のサイクルの一部でもあるとすると、いかに温暖化に適応するかということを議論したほうが建設的です。今回のダーバン合意は結果的に日本の国益に資する形に終わりました。現在の日本は、原発の再稼働が困難な状況であり、鳩山元首相が国際公約した「CO2排出量の1990年比25%削減」という目標の達成は困難です。既に日本の省エネ技術は世界一です。景気回復のためにも、この機会に民主党政権は「25%削減」公約を撤回すべきです。そして、原発の安全性を一層高めて、エネルギーの安定供給に務めていくべきです。
※:12月12日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20111212-OYT1T00320.htm