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2011/12/12【TPPによって公的医療制度は崩壊しない]

今回はTPPへの参加議論の中で、医療問題に関することについて述べたいと思います。私たち幸福実現党は、TPPを通じ、より一層の貿易の自由化を推し進め、もう一段の経済成長を成し遂げるために、基本的にはTPPに参加すべきと考えています。

TPP反対派は、農業分野と並んで医療分野においてもたいへん危惧している人たちがいます。TPPに参加すると日本の公的医療制度が崩壊する可能性があるというのです。中でも、TPP交渉参加によって混合診療が解禁になり、公的医療制度の安全性低下などが起こる可能性を指摘しています。混合診療は、保険診療と自由診療をあわせたもので、現在は原則として併用することができません。

しかし、現在TPPで対象となっているのは医療・保険のサービス分野であって、制度自体ではありません。医療制度が対象となる場合には、TPP参加国内での同意のもと、医療章が新たに書き加えられなければならないため、交渉に数年かかるので、一国の制度を変えることは至難の業です。

混合診療については、保険がきかない自由診療にも保険が適用できるようにすることが、安心・安全な医療サービスにつながるとの主張があります。しかし、この主張を無批判に受け入れると、必ず財源が問題となるので、方向性としては混合診療が認められるべきです。経済成長なくして、単に増税だけで賄うならば、いずれ公的医療制度は破綻してしまいます。

更に、TPPには具体的な医療を含めた社会保障サービスに関する規定は存在しません。確かに米国は、日本の医療自由化を求めていますが、それはTPPとは別に進んでいる問題です。事実、WTOやTPP参加国が過去締結したFTAにおいても、社会保障にまで踏み込んだ事例はありません。福祉国家が多いEUでも、社会保障制度を共通化する試みはなく、各国の専管事項として扱われています。

これらを見ても、TPPへの参加によって、日本の公的医療制度が崩壊すると考えるには無理があります。肥大化する現行の公的医療制度は、TPPがなくとも崩壊する可能性があるのです。

TPPへの参加は、勝つか負けるかの弱肉強食的な競争になると見られがちですが、国家間の自由貿易においては、国際分業によるwin-winの関係をもたらすものです。日本は、TPPの参加交渉において「世界経済の牽引役」を目指すべきです。