野田首相は、12月3日に都内で開かれた会合で、「TPP交渉参加」、「安全保障」、「消費税率引き上げ」の三つを挙げ、「自分の代で、捨て石になってけりをつける」などと語ったとのことです(※)。具体的な内容は検討の余地がありますが「TPP交渉参加」と「安全保障」についてはいいとして、「消費税率引き上げ」については断固反対です。
日本の急速な少子高齢化は、社会保障費を増加させて、深刻な問題となっていることは理解できます。しかし、デフレ不況下の今、消費税増税に踏み切れば、いっそう消費は冷え込み、所得税や法人税の税収は減ることが目に見えています。実際、消費税が導入された1989以降、消費税自体の税収は、消費税増税時を除けば、横ばいか微増傾向であるのに対し、所得税と法人税は減少傾向にあります。そして、1997 年の消費税増税以降、税収は一度も1997 年を上回っていません。つまり、消費税増税をしたからといって、社会保障の財源が確保できるとは限らないのです。
野田政権のこの消費税増税の流れに対して、民主党内でもついに小沢氏が動き出しました。小沢氏は、民主党内の反増税派を結集しようと、党所属国会議員を対象に、消費税増税に反対する署名活動に乗り出すとのことです。小沢氏は、来年1月に被告人質問を控え、かつてのような求心力は無くなりつつあります。一方で、このままでは次の選挙で勝てないと危機意識を持っている民主党所属国会議員が数多くいます。そこで、小沢氏は、「反野田」「反財務省」を御旗に、党内の反増税派を糾合して国民の支持を取り戻そうという考えのようです。
被告人とはいえ、未だに小沢氏の剛腕に期待する声が多いのも事実です。「反増税」ならば、党を超えて支持を得られる可能性もあるので、「壊し屋」の異名を持つ小沢氏は、党を割って政界再編を仕掛けることも考えられます。
先の衆議院選挙で「4年間は増税しない」ことを掲げて政権交代を果たした民主党ですが、野田首相は、11月初めにフランスで開かれたG20サミットで、国民に信を問うことなく消費税引き上げを国際公約として表明しました。これは明らかに国民軽視と言えるものです。果たして、小沢氏は増税に待ったをかけることができるのか注目です。
※:12月3日付読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111203-OYT1T00698.htm