10月9日、福島県で18歳以下の全県民約36万人を対象に、甲状腺の検査が始まりました。
これは、主に放射性ヨウ素の影響を調べる検査ですが、福島県は、放射能による健康被害を心配する保護者の思いに応えたものとしています。
放射能に関する知識が十分に伝わっていない現状で、マスコミの多くが不安を煽るような報道をする中では、確かに、子供を持つ保護者が心配する気持ちもわかります。
しかし、放射線と健康影響に関する専門家によると、福島県内の子供たちの甲状腺被曝はチェルノブイリ原発事故の1000分の1程度の線量とのことです。
2006年に国連の8つの機関(IHEAやWHOなど)が行った調査報告では、同事故後に、小児甲状腺がんで死亡した人数は15人となっています。
これはソ連政府が放射性ヨウ素に汚染された牛乳の出荷停止措置をとらなかったためであり、福島の場合、甲状腺がんはまず発症しないと考えていいということです。
また、一部報道で、子供の尿からセシウムが検出されたとあり、以前の検査で「1ミリシーベルト未満の被曝」とされた男児を持つ母親が「子どもがかわいそうで、悔やみきれない」と涙を流した、とレポートしているものもあります。
放射線防護学の第一人者である札幌医科大の高田教授(※)によると、セシウムを分析する技術は高く極微量のセシウムまで検出することができるとのことです。
そのため、今の福島県民全員から微量のセシウムが検出されるはずとのことです。
しかし、問題なのは検出されたセシウムの量なのです。
今回の報道では、検出されたセシウムの量は最大で13ベクレル程度とのことです。
同じく高田教授によると「私たちの体にそもそも含まれているカリウムの放射線量と比較するとわかりやすいと思いますが、これが人体1キログラム当たり約67ベクレルです。
従って、その程度の少量のセシウムで病気になることは、今すぐもないし、今後もありません。」とのことです。
実際に、放射性セシウムに関して、チェルノブイリの周辺住民に健康被害は報告されていません。
更に、100ミリシーベルト以下の被曝ならば、広島・長崎の原爆などでも、健康被害が起きないと科学的に検証されています。
こうした事実を積極的に報じず、人々の不安をあおる不確定な情報に基づいた報道を行うマスコミの姿勢に問題があります。
まさにこれが「風評被害」ではなく「報道被害」である所以なのです。
※:月刊「ザ・リバティ」11月号