急速に軍事力の拡大を進める中国は、台湾海峡においても、軍事面で台湾を質・量ともに凌駕しつつあります。
こうした状況を受けて、台湾は中国との軍事バランスを維持するために、米国に新型戦闘機の売却を求めていましたが、9月16日、米政府はこの新型戦闘機の売却を拒否し、その代りに台湾の既存の戦闘機の性能向上を図る部品を供与することを決めました(産経新聞http://sankei.jp.msn.com/world/news/110916/amr11091616400009-n1.htm)。
これは米国が中国に配慮した結果と言えます。
一方、南シナ海の大部分の領有を主張する中国は、ベトナムやフィリピン等のASEAN諸国と幾多の摩擦を生じています。
一国では、経済・軍事の両面で中国に対抗できないASEANの国々は、対中国で戦略的な協力関係を築ける国を探しています。しかし、この南シナ海の領有権問題に関して、米国は中立的な姿勢を崩していません。
この米国の姿勢の背景には、米国の深刻な財政事情があります。
米国は、景気を上向かせる上で中国の存在は大きいと考えていますし、万一、米国債の最大保有国である中国が、米国債を売り浴びせてその暴落を招く事態を避けたいと考えているからです。
米国民主党政権が共和党に押されている原因がここにあります。
ティーパーティーなど、オバマ政権が弱腰であることを批判する勢力に対して、米国民主党が押し返せません。
その理由は、オバマ氏自身が、首長としての経験上がなく、経済政策への確信が持てず、中国政府に日和見なところです。
(それでも直接選挙を通っているだけ、日本の首相よりも強いですが・・・。日本も議員内閣制から直接選挙に変えないと、マスコミ迎合型の短命内閣が続きますね。)
こうした米国の事情を知るベトナムは、自国の排他的経済水域を守るために、対中国の戦略的パートナーにインドを選びました。
インドは核を保有し地政学的にも潜在的な中国の対抗国です。ベトナムは、このインドと南シナ海で天然ガス・油田開発を共同で行うことで、インドとの連携を深め、中国を牽制する道を選んだのです。
翻って、日本はというと、南シナ海はシーレーンの要衝であり、東シナ海と同様、中国の覇権を許せば、日本のエネルギー供給を断たれることになります。
そのため、この地域での米国の軍事プレゼンスの退行が進むと考えられる中で、日本としてもインドやASEAN諸国と連携して、中国包囲網を形成していく必要があります。
しかし、民主党政権はこの問題について全く関心を持っていません。
これでは、ベトナムをはじめとして東南アジアの諸国からの日本への信頼は失墜するばかりです。
日本は中国の南シナ海覇権に対抗すべく、日米同盟を強化し防衛力を向上すると共に、早急にインドとの同盟の締結やASEAN諸国と連携して、東シナ海のみならず南シナ海での勢力均衡を築き上げることが求められます。