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2011/07/31 【早く引導を渡そう!「脱原発」工程表 思いつきを国策にするな】

【「脱原発」工程表 思いつきを国策にするな】2011年7月30日 産経より

菅直人内閣の「エネルギー・環境会議」が「原発への依存度を下げていく」ことを目指し、2050年までに原発を減らす工程表を作る方針を打ち出した。

菅首相は「脱原発」宣言が閣内外から批判を浴びるや、一転して「個人的考え」と前言を修正した。

首相は29日夜の記者会見で「私の考えをまとめていただいた」と述べたが、思いつきの首相見解を国の政策に置き換えたのは、極めて問題だ。

政権延命の思惑絡みで国家の大方針がこうも振り回されては、たまったものではない。

エネルギーは安全保障にもかかわる重要政策だ。

見直しには国民的議論が必要で、拙速かつ場当たり的な決定は将来に禍根を残す。

第一、退陣表明している首相に基幹政策の行方を左右する資格はないだろう。

そもそも、首相は本来あるべき手続きを無視している。

エネルギー政策は「エネルギー政策基本法」に基づき策定され、変更する場合、エネルギー基本計画を変えなければならない。策定者は経済産業相と決まっている。

だが、首相は原発を推進してきた経産省の影響力排除を狙い、国家戦略室による見直しにこだわっている。その結果が今回の中間整理である。

首相は会見で「(エネルギーの)短期と中長期の問題をしっかり議論しないと内閣の責任を果たせない」と、その意義を強調した。

だが、核燃料サイクルなどに関する原子力政策大綱の策定手続きもないがしろにされ、専門家らを含めた基本的な議論がきちんと行われたのかさえ、疑問だ。

猫の目のように変わる首相の発言や指示により、定期検査で停止中の原発は再稼働せず、電力危機が全国に広がっている。

全原発の停止で来夏には電力が9・2%不足するとの同会議試算もある。

今、菅政権が優先すべきは40年先の計画策定ではなく、性根を据えて今夏、今冬の電力不足解消に取り組むことだ。

「安全性が確認された原発は再稼働させる」という同会議の方針も空疎に響く。

中間整理は、電力供給への不安からすでに相次いでいる企業の海外脱出に拍車をかけることが懸念される。

産業の空洞化で経済活動がさらに収縮し、雇用悪化や消費低迷による景気後退という悪夢のシナリオが現実化しかねない。

死に体政権のエネルギー長期計画は、百害あって一利なしだ。