【機動部隊ない空母は単なる「メンツ」、独紙に辛らつ意見】2011年6月26日 サーチナより
中国人民解放軍の陳炳徳・総参謀長がこのほど、「中国は航空母艦を建造中だがまだ完成していない」と発言し、空母建造を公に認めた。
これについてドイツ紙「フランクフルター・ルントシャウ」は、「中国が世界海洋大国の地位を追及していることを認めるもの」とする記事を掲載した。
記事は「陳炳徳・総参謀長がトップメディアではない香港紙の取材に答える形でこの情報を宣言したことは、中国の野心を小さく見せようとするもの」と指摘した。
さらに、「中国の周辺国と米国は、中国の空母建造を日増しに脅威と受け止めており、このように力を誇示するやり方は地域情勢の緊張を招いている。
最近数カ月、主権・資源問題がからむ中国南部と東部海域での衝突が激しさを増している」とすて、ベトナム海軍が南シナ海で実弾演習を実施したことや、フィリピンが南シナ海を“西フィリピン海”と改称する準備をしていることなどを例に挙げた。
一方、欧州の専門家は同紙の取材に対し、駆逐艦や潜水艦などを含む機動部隊を編成して初めて攻撃力を獲得するため、中国の空母が実際に投入されるにはさらに数年かかると指摘。
「中国にとって空母建造は面子(めんつ)のためのプロジェクト」との見方を示した。
同紙はまた、「南シナ海、東シナ海で衝突が発生したとしても、中国は実際には空母を必要としない。台湾と戦争になった場合でも、空母はわずかな増援作用しか発揮しない」とした上で、「中国の空母建造の本当の目標はインド洋」だと指摘した。
同紙によると、輸出の大部分と原油輸入の80%がインド洋の航路を通るため、中国はパキスタンやミャンマーと沿岸の軍事基地建設で協力を進めている。
米国の専門家によれば、中国は「アフリカまでつながる基地の鎖」の構築を進めている。
引用、以上。
航空母艦は搭載している艦載機によって高い攻撃力を持っていますが、航空母艦自体は航空機と潜水艦からの攻撃に弱いという欠点があります。
アメリカのニミッツ級原子力航空母艦の場合は、艦載機を戦闘空中哨戒(CAP)という任務に就かせ、航空母艦に近づく敵を迎撃すると同時に、母艦に搭載された対空ミサイルによって迎撃します。
しかし、これでは心許ないので空母を護衛する艦艇が必要です。空母と護衛艦艇の集合体が「空母機動部隊」と呼ばれます。
「空母機動部隊」は各国によって呼び名が異なり、かつて存在した日本海軍では「航空戦隊」「航空艦隊」と呼び、現在のアメリカ海軍では「空母打撃群(CSG:Carrier Strike Group)」と呼んでいます。
アメリカの空母打撃群は、原子力航空母艦の他にイージス巡洋艦1隻、イージス駆逐艦2隻、攻撃型原子力潜水艦1隻から構成されています。
イージス艦は航空母艦を航空機からの攻撃から守るために、強力なレーダーシステムと対空ミサイルで武装すると共に、潜水艦を迎撃するための魚雷を搭載しています。
更に原子力潜水艦に前方を警戒させることにより、航空母艦の安全を守っています。
よって、護衛艦艇のサポートを受けていない空母は「極めて狙いやすい獲物である」と言えます。
先日も11隻の艦隊が沖縄近海を通過し、西太平洋上で遠洋訓練を行ないましたが、現在、中国海軍が東シナ海や南シナ海で駆逐艦や潜水艦などを派遣して訓練しているのは、空母を護衛するための訓練です。
中国海軍が守らねばならない海洋領域は日本同様に広大です。中国も日本と同じくシーレーンは重要なのです。
中国はアメリカ海軍とインド海軍を視野に入れています。両国ともに空母を持っているからです。
中国は将来的に空母をインド洋に展開させることにより、インド海軍を牽制し、シーレーンを安定させる公算は非常に高いと考えられますが、牽制の効果を挙げるためにはインド海軍と同じ最低2隻の空母を中国は持つ必要があり、そうなるまでには5~10年の歳月がかかります。
中国の海洋覇権を目指す戦略はまだ始まったばかりであり、中国海軍は空母を持つといってもまだまだ張り子の虎の状態です。
日本は今のうちに、国産空母建造も含め、防衛強化策を取る必要があります。