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2011/06/21 【「復興」「社会保障」「財政再建」の三段階増税を許すな】

【「復興」「社会保障」「財政再建」の三段階増税を許すな】2011年6月20日現代ビジネス 高橋洋一(嘉悦大学教授、元内閣参事官)より

簡単に辞める気などない菅総理は、エネルギー政策や補正予算でやる気をみせている。最近は、「自然エネルギーへの転換は30年来の主張だ」と言い出した。

しかし総理として本気にやる気だったら、就任直後の所信表明で言うべきだろう。しかし一言も触れていない。

なにより、特に大きな政策変更には少なくとも1年は要する。そんな基本も知らないなら総理としては、辞める前から失格だ。

菅政権の政策はこういう付け焼き刃が多い。その中で、増税だけはしっかりしている。

常日頃から増税をしっかり考えている財務省とべったりだからだ。

いいか悪いかは別として、いつも考えて準備している人(役所)はやることが違うと、皮肉を込めて言っておこう。

もっとも、財務省にとって総理は増税達成の単なるコマであり、用済みになれば代えてもいいくらいにしか思っていない。

財務省の狙っているのは、当面の復興増税とその後の消費税増税だ。3年間くらい復興財源のために増税が行われ、その次は社会保障のための消費税増税が行われる。

これらの増税は復興とか社会保障に充当するので、直ちには財政再建にならない。その後に、本格的な財政再建増税になるだろう。

ホップが復興、ステップが社会保障、ジャンプが財政再建という三段階大増税が進行中だ。

民主党と自民党が合意した復興基本法では、復興債を発行して、それを3年間くらいの短期間で償還する財源は増税とされている。

経済学のクッション理論によれば、大震災のような一時的ショックに対応するのは長期にわたり償還する国債での対応だ。

もし100年に1回の大震災なら100年国債が基本になる。

だが、復興基本法の国債発行は増税が目的で、そのためのつなぎ国債である。クッション理論による超長期国債ではない。

だからこそ、今の復興基本法に対する反論は国会議員の中にも多い。

16日(木)、超党派による「増税によらない復興財源を求める会」が、復興財源について復興債の日銀買取や埋蔵金での対応を求めた。

その中身は、本コラムでこれまで書いている復興財源33兆円と基本的には同じだ。ただ、この超党派の集まりははかなり大きく広がっている。

16日現在で集まった署名は民主115、自民66、みんな16、公明2、国民新・新党日本5、社民4、無所属3の計211人。

ステップは社会保障だ。6月2日の内閣不信任騒動に隠れて目立たなかったが、その日に公表された「社会保障改革案」では消費税率を2015年度までに10%まで引き上げることになっている。

菅政権は、20日(月)までに消費税引き上げを政府・与党で決定したい。

ところが、17日行われた民主党調査会・PT合同総会では、反対意見が9割以上を占めた。20日にも菅政権は強行突破するという見方だが、その場合、松原議員の言葉を借りれば、民主党執行部はファシズムだ。

そもそも論をいえば、社会保障財源に消費税を用いるというのは、社会保障理論からおかしい。

社会保障の基本は所得再分配と給付・負担の明確化だ。所得再分配のためには財源は所得比例のものが望ましい。

欧米では給付付き税額控除という仕組みを導入して、税負担や財源(負担)はマイナスの給付と考え、給付と合算して所得再配分政策を行っている。

給付付き税額控除の場合、まさしく税と社会保障がシームレスに一体化する。

ところが、日本では、単に消費税増税の口実として、税と社会保障の一体改革が語られている。

ちなみに、民主党では給付付き税額控除を導入するといっていたが、この制度は消費税を社会保障財源にするには不都合なので、財務省のいうとおりに、あっさり放棄したようだ。

また、社会保障では給付と財源(負担)の関係が明確でなければならない。

かつて民主党が得意だった年金問題は個人ベースの給付と負担のデータの不備で起きた。

そこで、国民が年金情報を知るために年金定期便などができた。そこには払った消費税というデータはない。

しかも、保険料であればいくら足りないかは保険手法で明確にわかる。しかし、消費税になるとどんぶり勘定になって給付・負担の関係が不明確になる。

もし社会保障財源が足りないのであれば、保険料の引き上げを行うべきだ。

もっとも、その前にデフレを脱却するのがもっとも公平な財源確保の道である。

しかし、財務省はこうした基本論を飛ばして、消費税を社会保障目的税としてきた。

そして、消費税増税を麻生政権での平成21年度所得税等を改正する法律附則104条で仕組んだ。

これは、今、菅政権に鞍替えした与謝野経済財政担当相が、自民党時代に取りつけた「増税時限爆弾」だ。

それには、「政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」と書かれている。

これは今でも有効な条文であるので、これを根拠として消費税率引き上げがでている。

しかし、2008~10年度で「経済状況が好転」したかといえば、誰の目にも答えはNOである。リーマンショックと今回の大震災の二度のショックで経済はよくない。

それに関わらず、この条文を根拠して、民主党が消費税引き上げを行うというのであれば、今なおGDPギャップが20兆円もあるデフレで、「経済状況が好転」になっていない。

むしろ、条文を素直に読めば、前提条件が崩れているので、今は「必要な法制上の措置」を講じなくてもいい。

17日の民主党調査会・PT合同総会では、消費税引き上げのタイミングとして、「経済状況が好転したら」という修正提案があったという。しかし、修正には何の意味もない。和田隆志隆史政務官(財務省OB)の説明もしどろもどろだった。

このまま、菅政権はやるべき復興はすぐやらずに、増税だけを急ぐのだろうか。

ジャンプは財政再建だ。財務省はいつでも財政再建キャンペーンをやっている。債務残高がGDPの2倍、1000兆円もあるとかいう話は耳にタコができている。

政府の資産もたっぷり700兆円もあることはいわない。しかも、この資産のうち大半は官僚の天下り機関への公金(貸付金や出資金)だ。

ほんとうに日本は財政危機なのか。

ソブリンもののクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)からわかる。国が破綻すれば国債が紙くずになって損失が出る。

CDSでは、保険料を支払う代わりに万が一の時に保証してもらえる。その保険料の大きさで、国の財政破綻のリスクがわかる。

ギリシャでは1600ベーシスポイント(=16%)を超えて、5年以内に破綻すると予想されている。

日本は大震災で高くなったが、イタリアより低く100ベーシスポイント(=1%)にもならず、100年以内に破綻するかどうかだ。

同列に比較できるかどうかわからないが、数字上では30年間以内に87%の浜岡原発より、はるかに低い確率だ。

しばしば、震災復興と財政再建を両立しなければいけないというが、数字の上からはそうでない。

しかも、なにより、経済復興すれば、財政再建は達成できるので、そもそも財政再建を別の目標とすべきかも疑わしい。

引用、以上。

財務官僚は常に「増税」の口実を探しており、「復興財源の不足」「社会保障の危機」「財政再建」という、誰もが反対しづらいことを口実にして、三段階の増税を目論んでいる危険性が指摘されています。

昨日20日、復興基本法が可決されましたが、復興基本法の国債発行は増税を目的とした「つなぎ国債」であることを高橋教授は指摘しています。

「つなぎ国債」とは、償還財源を確保するまでの資金繰りのための償還期間が短期の国債であり、その償還財源として「増税」が使われやすいのです。

実際、1994年に所得減税の財源として「つなぎ国債」が発行されましたが、3年後の1997年に消費税が5%に引き上げられました。

いずれにしても、菅首相や財務官僚には、幸福実現党が提唱しているような「経済成長で税収増を図る」という発想は皆無であり、いかに国民から税金を巻き上げるかしか頭に無いのが現状です。