【米国:南シナ海安保多国間で中国包囲網を…ゲーツ長官】2011年6月4日 毎日より
米国のゲーツ国防長官は4日、訪問先のシンガポールで開催中の「アジア安全保障会議」で講演し、南シナ海の自由航行権など海洋の安全保障を守るため、米国は同盟国や友好国と協力して、軍事的関与を続けていくことを明らかにした。
名指しは避けながらも、南シナ海で軍事力を増強させ周辺国との対立が先鋭化する中国をけん制した。
ゲーツ長官は近年、アジア各国が米国と軍事的関係の強化を望む意向が強くなっているとして「域内の各国と協力して、(南シナ海など)国際水域に各国が平等かつ自由にアクセスできることを保証しなければいけない」と指摘し、多国間の枠組みで中国包囲網の構築を進めるとした。
一方、米国内の国防費削減の動きがある中、「空軍の優位性や機動性、長距離爆撃機の開発などは、アジア地域の戦略上重要な問題だ」と述べ、国防予算の優先事項に位置づけられるとした。
北朝鮮については「次の挑発は予測できないものになると危惧する。挑発によって交渉を引き出し、譲歩を勝ち取っており、我々は同じことを繰り返したくない」と強調した。
また、アジアでの米軍強化策も明らかにし、シンガポールに新型艦艇「沿海域戦闘艦」(LCS)を配備する方針も示した。南シナ海近海に展開させることで中国をけん制する狙いがあるとみられる。
【アジア安保会議米中のせめぎ合いの場に】2011年6月5日 産経より
30カ国以上の防衛閣僚らが出席し、5日までの3日間にわたり開かれたアジア安全保障会議は、米国と中国のアジア・太平洋地域における力のせめぎ合いの場となった。ともに牽制しつつ、東南アジア諸国への信頼醸成をアピールした。
「100ドル賭けてもいい。5年後も(米軍のプレゼンスは)今と同じ状況にある」
4日、ゲーツ米国防長官が、演説に続く質疑応答をこう締めくくると、会場は拍手と笑いに包まれた。
中国という「潜在的な敵国」に対抗するため、アジア・太平洋地域における米軍のプレゼンス強化を打ち出したゲーツ氏の、“念押し”ともいえる言葉だった。
ゲーツ氏の演説の基本を成していたのは、日本などとの同盟関係を軸に、共同軍事演習などを通じ東南アジア諸国との関係も拡大し、プレゼンスを高めていく―という道筋だ。
そして、ゲーツ氏の演説を通じ米国は、東南アジア諸国に「安心しろ」というメッセージを送り、中国には「手出しをするな」というシグナルを送ったのである。
5日に登壇した中国の梁光烈国防相もまた、メッセージを発信した。「信頼と相互理解」などの5原則を掲げ、「中国はこうした原則を政策に埋め込み、行動にも移している」と強調。
「中国は防衛志向の国防政策を追求していく。軍事力の近代化も防衛という範囲に収まっており、決して覇権を追求することはなく、軍拡主義に陥ることもない」と繰り返した。
また「南シナ海においては航行の自由に問題はない。状況は安定している」と言い放った。
この発言にかみついたのが、南シナ海で5月、中国側に探査船のケーブルを切断されたベトナムなどだ。
ベトナムのフン・クアン・タイン国防相などは「(梁氏の)『安定』という発言があったが、いろいろな事件が起こっている。ベトナムは忍耐と自制で対応しているが、演説での発言を実際の行動で示してもらいたい」などと反論した。
一方、マレーシアのナジブ首相は「中国も米国もパートナーだ」と述べ、中国との経済関係を強める東南アジア諸国の複雑なスタンスを代弁した。
こうした中、北沢俊美防衛相の演説は東日本大震災への対応に費やされた。質疑応答では「日米同盟に言及しなかったが、意味があるのか」との質問も出るほど、日本の存在感は希薄だった。
引用、以上。
ゲーツ米長官とベトナム国防相の発言の背景には、ここ一ヶ月、南シナ海での勢力拡張に中国が力を入れている事実があります。
南シナ海を巡る中国とベトナムとの対立が激化する中、米国は南シナ海における軍事的プレゼンスを高めていくことを宣言し、東南アジア諸国に安心感を与えると共に、中国に対して牽制しました。
米国のアジアでの軍事的プレゼンスの拡張とは、具体的には、米韓関係強化のほか、東南アジアとインド洋も米軍の活動範囲とし、シンガポールに新たな戦艦を置くことや、中期的な空海戦争計画を新たに検討していることなどです。
ゲーツ米長官は、米国内で進んでいる国防費削減が、アジア太平洋地区への米軍展開の障害になることはないと約束しました。
しかし、質疑応答では「日米同盟に言及しなかったが、意味があるのか」との質問も出るほど、日本の存在感は希薄でした。
日本がのん気に国内の政局に現を抜かしている間に、中国の南シナ海の聖域化は着々と進んでいます。
この中国の動きに対応するかのように、アメリカやベトナム、韓国、台湾などの国々は、多国間で中国包囲網を強めようとしています。
ハッキリ言って、日本はこれらの動きに完全に乗り遅れています。
日本はシーレーンが止められてしまえば、国家が立ち行かなくなります。それなのに、民主党政権は、国際情勢にうとく、中東の政情不安や、中国の南シナ海における動きにも全くもって無関心です。
政治は国内問題だけで終わるものではありません。国際的な動きにも更に注意を向けていく必要があります。