【中国、宇宙開発を海洋戦略に利用―米議会公聴会】2011年6年2日 産経より
米国議会の米中経済安保調査委員会がこのほど開いた中国の宇宙戦略に関する公聴会で、中国が軍事目的の宇宙開発により東シナ海での尖閣諸島などの領有権紛争への軍事能力の増強をも意図していることが、専門家の証言などで明らかにされた。
公聴会では議会側を代表してアラン・ウルフ下院議員(共和党)が「主要諸国はみな科学や商業の目的で宇宙開発を進めているが、中国の場合、人民解放軍が全責任を持ち、軍事目的を優先している」と証言した。
さらに「中国は特に西太平洋や東アジアでの米軍の抑止力を減らすために、米軍の依存する宇宙資産の無力化と中国独自の宇宙軍事能力強化を意図している」と述べた。
オバマ政権を代表したグレゴリー・シュルテ国防次官補代理は中国の宇宙軍事利用の実例として2007年の衛星破壊兵器の実験をあげ、「中国は危機や衝突の際に、潜在的な敵による宇宙軍事利用を阻むための能力を多次元で高めている」と証言した。
専門家の証人としては6人が登場したが、そのうちの元国防総省中国部長で安全保障問題研究の「プロジェクト2049研究所」専務理事のマー
ク・ストークス氏は「宇宙を軍事に利用する戦略は中国の国家目的の主要手段となった」と強調した。
同氏は実例として中国軍部は(1)宇宙に高度の電子光学(EO)システムや合成開口レーダー(SAR)、電子偵察装置、赤外線センサーなどを搭載する衛星を打ち上げ、地上や海上の潜在敵の部隊の動きを正確につかむ能力を増強している
(2)衛星通信により、飛行中のミサイルに目標認定の正確な情報を送るイメージ送信の能力を高めている
(3)一連の小型偵察衛星をSAR衛星と共同機能させ、地上のミサイル発射司令官に移動する目標の動きを正確に伝える能力を高めている-ことなどをあげた。
ストークス氏は「この種の宇宙利用の軍事力強化は中国の西太平洋、東シナ海、南シナ海での領有権紛争を主とする海洋戦略への適用が意図されている。
5年から10年後には、この地域での有事に米軍が在日米軍基地やグアム島の基地から作戦行動を起こす際の中国側の阻止能力を大幅に強化することになる」と証言した。
引用、以上。
中国は西太平洋地域での米軍の介入を阻止するために「アクセス拒否/接近阻止(A2AD:Anti-Access/Area-Denial)」戦略を採用しています。
「アクセス拒否/接近阻止」戦略とは、アメリカの空母打撃群の中核である原子力空母に対して、空母艦載機の攻撃範囲外から攻撃することによって、アメリカ海軍が台湾などの作戦領域に近づけないようにする中国の戦略です。
中国はその中でも特に、米海軍艦船をミサイル攻撃で行動不能に追い込むことを狙った軍備拡張を急速に進めています。
海上を移動する艦船を標的にするには、広大な海洋で標的の索敵・探知、目標の追尾などを行う高度な偵察・監視能力が求められます。
中国が必要としているのは、西太平洋地域という広大な海域で米軍艦船にミサイルを正確に誘導し、撃破することが出来る索敵能力です。
これを達成するためには「宇宙からの目」――人工衛星による監視が必要です。
宇宙空間は敵国からの攻撃が最も届きにくい空間であり、衛星を破壊する手段は限られています。
米国と日本は今後の中国の覇権拡大に対して、「宇宙という聖域」から始まる新たな戦争にも備えなければなりません。
そのためにも、日本における宇宙産業の振興は喫緊の課題となっています。