【海水注入中断―首相の行動徹底検証せよ】2011年5年24日 産経より
政治主導に固執した菅直人首相によって、原発事故が拡大したのではないかという疑念が強まっている。
「人災」が疑われる以上、首相の行動を徹底的に検証しなければならない。
問題は、東日本大震災翌日の3月12日に行われた東京電力福島第1原発1号機への海水注入が一時中断されたのは首相の言動がきっかけではないかという点だ。
23日の衆院復興特別委員会で、首相は海水注入が始まった段階で東電から報告を受けていなかったと主張した。
「報告が上がっていないものをやめろとかやめるなとか言うはずがない」と、自身や官邸で協議していたメンバーによる中断指示を否定した。
だが、注入を知らなかった首相が激怒したために、東電が作業をストップさせたとの証言もあるという。
「言うはずがない」との説明では到底不十分だ。
班目(まだらめ)春樹・原子力安全委員長が「再臨界の危険性がある」と進言したのが中断に関係したと細野豪志首相補佐官が述べた。
これを班目氏が強く否定し、1日で説明が訂正される混乱もみせている。
緊急事態の下、1号機の原子炉を冷やすための海水注入が1時間近く中断したのは揺るぎない事実である。
冷却が継続されていれば短期収束への可能性も残されていただけに、事故原因の分析上、極めて重大なポイントだ。
同じ3月12日早朝、首相がヘリで行った第1原発の視察とベント(排気)の遅れとの関係などについても、検証が不可欠だ。
具体的には、国会が憲法などに定められた国政調査権を発動し、東電や政府関係者の証人喚問や資料提出を求めるべきだ。
偽証罪など強制力を伴う調査によって事実を解明してもらいたい。
首相が設置を約束してきた事故調査委員会も、より高い独立性を求められよう。
透明性のある事故検証を行わなければ、日本に対する国際社会の同情は無責任さへのいらだちに変わり得る。
国政調査権については、衆参両院の予算委員会が昨年、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で海上保安庁が撮影したビデオ映像の提出を求めた例がある。
首相答弁を「嘘の上に嘘で塗り固めている」と批判した自民党の谷垣禎一総裁は、調査権の発動を各党に働きかけ、速やかな真相解明を主導すべきだ。
引用、以上。
海水注入中断問題について、政府側は場当たり的対応を重ねて来たため、矛盾点が多く、谷垣氏が指摘しているように「嘘の上に嘘で塗り固めている」状態です。
東電が16日に発表した資料によると、1号機の原子炉への海水注入は震災翌日の3月12日の午後7時4分に開始され、海水注入から約20分後の午後7時25分にいったん注入を中止。午後8時20分に注入を再開しています。
谷垣自民党総裁が「菅首相の指示で海水注入が55分間にわたって中断された」と追及したことに対して、菅首相は「報告はなかった。報告があがっていないものを 『やめろ』とか『やめるな』と言うはずがない」と強く否定しました。
一方、首相官邸ホームページにある「原子力災害対策本部」の資料は3月12日午後6時に「真水での処理をあきらめ海水を使え」との「総理大臣指示」が記載されています。(下記リンクp.48)
→http://www.kantei.go.jp/saigai/pdf/201105191700genpatsu.pdf
このことについて、菅首相は「海水注入にあたり必要なことを検討してほしいと指示したということだ」と釈明。官邸関係者は「(資料にある)指示を誰かが言葉を短くし過ぎたんだろう」と釈明しています。
これに対して、谷垣氏は「致命的な捏造をしてるんじゃないか。許し難い」と断じています。
政府の公式資料の捏造自体が許されないことであり、また、これまで海水注入に抵抗していた東電に対して、首相が「政治主導」で海水注入を指示したと喧伝されていたのはウソだったということにもなります。
また、首相が「臨界の危険がある」として海水注入の是非を検討中だったにもかかわらず、実際には注入が始まっていたとするならば、最大の危機管理において政府の情報把握、指揮命令系統が全く機能していなかったことを意味します。
海水注入の報告についても、東電は原子力安全・保安院に口頭で連絡しているとしており、保安院側は連絡の記憶がないとしており、双方の言い分も食い違っています。
食い違う事実の検証については、信じられないことですが、枝野官房長官は「福島原発事故対策統合本部の議事録は作成していない」と語っており、菅政権は危機管理の検証をうやむやにしようとしているとしか思えません。徹底追求すべきだと考えます。