【浜岡停止でLNG高騰か、日本の輸入量が過去最高水準に】2011年5月17日 サンケイビジネスアイより
日本の液化天然ガス(LNG)輸入量は今後1年間で過去最高水準に達するとみられ、この冬から価格が高騰しそうだ。
日本は世界のLNGの約3分の1を輸入している。世界3位のLNG輸入国である英国などへの供給が、需要期に日本向けに振り向けられるとの見方を背景に、英国の天然ガス先物12月限の6月限との価格差は、3月10日以降10%拡大した。英国での価格は世界のLNGのスポット価格の指標だ。
東京電力福島第1原子力発電所での事故後、原発発電能力の57%が停止したため、日本は代替燃料を必要としている。
国際エネルギー機関(IEA)は9日、日本のガス需要は向こう1年間に13%増加し過去最高水準に達するとの見通しを示した。
米業界コンサルタント会社ショーク・グループのスティーブン・ショーク社長は「冬になってもこれらの原発の発電能力が戻らなければ、欧州と日本の価格競争が激しくなる」と見通しを示した。
ノルウェーのアークティック・セキュリティーズは8日、中部電力の浜岡原発の運転停止もあり、日本のLNG輸入量は今後1200万トン増加すると予想している。これは世界の貿易量の約6%に相当する。
昨年の日本のLNG輸入量は7000万トンだった。
世界最大のLNG産出国のカタールは震災後、日本へLNG400万トンを追加供給することで合意。カタールのアルサダ・エネルギー相は8日、中部電力会長の同国訪問を受けて、日本へのLNG輸出をさらに増やす可能性があると発言している。
ソシエテ・ジェネラルは、日本が失った原子力発電能力の86%をガスでまかない、残りは原油や石油製品で対応するとみている。
欧州最大のガス供給網を運営する仏GDFスエズは9日、日本のLNGの追加需要で英国への輸出量は減る見込みで、価格の「非常に強い伸び」が今後3~4年間起きると予測する。
エネルギー調査・コンサルタント会社の英ウッド・マッケンジーのガスの責任者、ノエル・トムネイ氏は「福島(原発事故)以降、価格はかなり上昇している。欧州は十分なガスの蓄えがあったが、今や失われつつある」と述べた。
引用、以上。
日本で「ロンドン国際石油取引所」「英国の天然ガス先物」と呼ばれているのは、正しくはインターコンチネンタル取引所ヨーロッパ先物(ICE Futures Europe)のことです。
商品先物取引とは、農産物や鉱工業材料等の商品を将来の一定日時に一定の価格で売買することを現時点で約束する取引であり、先物取引 (Futures) の一種です。
商品先物取引の主な役割として、価格変動のヘッジ機能と商品価格の調整機能があります。ヘッジとは、商品の現物取引を行っている者が、将来の価格変動によって損失を被らないように保険を掛ける機能です。
日本の企業は、この機能を上手く使っていないため、石油やガスの価格の高騰が商品価格に容易に転嫁されてしまいます。
価格調整機能とは、商品先物取引では、公開の市場で多数の参加者が競り合うことで価格が決定されるので、理論上、その時点での最も公正な価格が決められることを指します。
要するに、市場のニーズを的確に反映していると言えます。
インターコンチネンタル取引所ヨーロッパ先物6月限の相場価格は昨日17日現在、1000000BTU当たりの価格は9.35ドル、ニューヨークマーカンタイル取引所天然ガス先物は1000000BTU当たり4.26ドルです。
これは、日本が浜岡原発を停止し、今後ともその他の原発が再稼働できない状態に追い込まれることにより、ヨーロッパの天然ガス価格が高騰し、天然ガス獲得競争が激化することを意味します。
すなわち、菅政権の誤った判断により、世界の資源獲得競争が始まったということです。
日本とヨーロッパが資源獲得を争うことになれば、シェールガス開発を進めるアメリカなどエネルギー安全保障を強固に進めている国は非常に有利な立場に立ちます。
これまではエネルギー安全保障の観点において、原子力、火力、水力等のエネルギー源をバランス良くコーディネートしてきた日本ですが、浜岡原発の停止により、原油やLNGへの依存度が急激に高くなり、日本のエネルギー安全保障は危機的状況に追い込まれています。
日本のエネルギーの自給率は18%(※核燃料の再利用が可能な原子力を準国産に換算)ですが、全ての原子力が止まれば、エネルギーの自給率は4%に急減します。
浜岡原発停止で、日本はシーレーンを断たれれば国家が簡単に破滅するような状況に追い込まれてしまいました。この状況を最も喜んでいるのは、中国や北朝鮮でしょう。
菅政権はエネルギー安全保障と引き換えに、支持率を高めようとしている大変危険な政権であり、今まで日本にこのような無責任な政権は存在したことはありませんでした。