【「首相の間違った指揮が混乱の元」経団連会長が批判】2011年4月27日 産経より
日本経団連の米倉弘昌会長は26日の会見で、菅直人政権の東日本大震災への対応について「間違った陣頭指揮が混乱を引き起こす元になっている」と述べ、菅首相らの対応が不安を招いたと批判。
首相や閣僚が外遊を控えていることにも触れ、「ちゃんとした閣僚は国内にとどまって指揮をとるべきだが、そうでない人は出て行ってもらって構わない」と突き放した。
東京電力福島第1原子力発電所の事故対応では「(首相が)感情に流されて激怒したり、閣僚が(東電)国有化を口にして国民の不安感を引き起こすのは問題だ」と指摘した。
引用、以上。
【「スピード感がない」と政府の震災対応批判経済同友会の代表幹事就任の長谷川氏】2011年4月27日 産経より
経済同友会の代表幹事に27日に就任する長谷川閑史武田薬品工業社長(64)は産経新聞のインタビューに応じ、東日本大震災に対する政府の対応について「全体的にスピード感がない。誰が責任を持って決めているのか不透明だ」と痛烈に批判した。
また菅直人首相らのリーダーシップに触れ「修羅場をくぐってきた人たちはリスクへの対応も機敏かつ果敢にできるが、そういう経験のないひとが大きなリスク対応を迫られたときには自信を持って判断ができない」と指摘。
「自分なりの的確な判断ができる情報を集め、自分の価値判断基準に照らして情報を集め、それに基づいてスパッと判断ができることが意思決定者の条件だ」と強調した。
さらに「短期的には震災復興を優先せざるを得ないが、政策的にはやらければならないことばかりだ」とし、税・財政・社会保障制度の一体改革や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加に向けた取り組みは「震災からの復興と矛盾しない」と言明した。
経済3団体のトップとして「2期4年間の任期中にこの国が長期停滞から脱して成長路線に戻れるようすべてをかける」と強い意欲を表明。
「先進国が中心になって新興国とともに最貧国を手助けして安定した世界をつくらないと、いつまでたっても問題が解決できない」と日本は経済成長を通して世界経済の安定に寄与すべきとの考えを示した。
引用、以上。
菅政権の危機管理対応におけるリーダーシップの欠如について、多く批判を浴びせられていますが、今回の記事は経団連と経済同友会のトップが菅首相のリーダーシップを批判したものです。
今回の震災で、日本は災害に対するソフト面での対応が立ち遅れていることが明らかとなりました。特に危機管理の人材とそれを生かす組織の在り方について全く考察されていなかったことは明らかです。
震災後に対策本部が乱立し、機能と責任が不明瞭になったのは、危機管理の考察の無さが原因です。
もし、首相が統合的に指揮を執るならば、まずは中央指揮センターを立ち上げるべきでした。
例えば、終戦直後には「経済安定本部(安本)」が作られました。同本部の総裁は内閣総理大臣が務め、その下に国務大臣が務める総務長官を置いた組織で、各省庁の縦割りを超越する絶大な権限を有し、混乱期を乗り切りました。
このようなセンターを作っておくことは非常に大切です。
現在で言うならば「国家戦略局」がこうした役割を果たすべきだったのでしょうが、国家戦略局は全く機能せず、蓮舫節電担当大臣や辻元ボランティア担当補佐官など、訳の分からない責任者をどんどん増やしていきました。
記事に「自分なりの的確な判断ができる情報を集め、自分の価値判断基準に照らして情報を集め、それに基づいてスパッと判断ができることが意思決定者の条件だ」とありますように、必要なことは、大臣や合議制機関を増やすことではなく、「リーダーシップ」なのです。
アメリカでは、戦争時には統合参謀本部第三部(作戦部)が管轄する「国家軍事指揮センター」(NMCC:National Military Command Center)が立ち上げられ、大統領は戦争指導をすることになります。
日本はアメリカのように「国土安全保障省」(災害時における指揮は国家安全保障省長官が指揮を執る)のような省庁が無いため、戦時においても、震災時においても同様に、中枢となる中央指揮センターを作ることは非常に大切です。
こうしたセンターを作っておけば、無用な対策本部を大量に作らずに済みます。
震災後、菅政権は次から次へと対策本部を作り、参与を任命し、役人の併任を増やしましたが、司令塔がわからずに「船頭多くして船山のぼる」といった大混乱が起こりました。
結局、現場の方々の、文字通りの「血の滲むような努力」で何とか体裁を保っているのが現状です。
これは、実は第二次世界大戦の時と様相を同じくしています。日本軍は陸軍・海軍ともに優秀な人材を持っていましたが、これを生かす組織がありませんでした。
大日本帝国憲法下では天皇陛下の下、陸軍大臣と海軍大臣は天皇の統帥大権を輔弼する(助ける)職責として全くの同列であり、しばしば対立を引き起こしていました。
戦時においても災害時においても、強力なリーダーシップを持った人間に一元指揮を委ねることは非常に大切です。
これができれば、震災における復興ももっと速く進んだはずです。
今回の震災の危機管理対応は、トップのリーダーシップのあり方についての良い反面教師となりました。