【米国:パキスタン軍を批判「タリバンと関係維持」亀裂深刻化】2011年4月23日 東京新聞より
米軍トップのマレン統合参謀本部議長は20日、パキスタンで会見し、パキスタン軍情報機関(ISI)がアフガニスタンの旧支配勢力タリバン一派と「関係を維持している」と指摘、「(米パ関係を)非常に困難にしている」と批判した。
パキスタン軍トップのキヤニ陸軍参謀長はこれに先立ち、米国がパキスタン側で続ける無人機攻撃を「許されない」と指弾しており、7月のアフガン駐留米軍撤退開始を前に「対テロ」同盟の亀裂は一層深刻化している。
マレン氏は戦況などを確認するためアフガンを訪問後、パキスタンで21日にキヤニ氏と会談したとみられるが、内容は不明だ。
米パ関係が特に悪化した発端は、今年1月、米中央情報局(CIA)嘱託職員がパキスタン東部ラホールで地元の若者2人を射殺した事件。この職員が遺族に和解金を払うなどして釈放された直後の3月、CIAが無人機でパキスタン北西部を空爆した。
一方、こうした情勢下、アフガンのカルザイ大統領は16日、同国を訪れたギラニ・パキスタン首相と会談し、タリバンと和解を目指す合同委員会の設置で合意。
オバマ米政権はカルザイ政権を「汚職体質」などと非難し溝を深めており、「米国抜き」で当事国同士が和平構築を模索する動きが進んでいる。
マレン氏のいら立ちは、こうした動きへの米国の焦りも反映しているとみられる。
引用、以上です。
アフガニスタンでのタリバンとの戦闘に苦しむアメリカにとって、隣国パキスタンからアフガニスタンに新たなジハード(聖戦)要員が供給される流れを断てるかどうかが、作戦成功のカギであり、米軍撤退後の地域の安定化のカギでもあります。
アメリカはパキスタン政府に対し、アフガニスタンとの国境付近のタリバン勢力への攻撃を強化するよう繰り返し求めてきましたが、パキスタン政府は国内の反米感情やイスラム過激派との板挟みになる形で動きが鈍く、アメリカは不信感と焦燥感を深めていました。
タリバン勢力にとっては、アメリカとパキスタンの亀裂が深まることは最も望ましい事態であり、アフガン情勢はますます混迷の度を深めていきそうです。
アメリカはこれを機に、アフガニスタンへの関与を薄める可能性が十分にあります。
アメリカのアフガニスタンへの関与の仕方も、種々の批判を浴びています。
アフガニスタン政府の腐敗は、今に始まったことではなく米国が打ち立てたカルザイ政権の統治能力への疑問は、かなり早い段階から指摘されていました。
そもそも、アフガンに欧米型の中央集権型政府を打ちたてようとする試み自体が実現不可能な目標であり、『フォーリン・アフェアーズ』2010年9月号は「『アフガンにおける成功』の定義は何か」と題して、中央集権モデルではなく、分権化モデルへと国家建設のギアを入れ替える必要がある、としています。
これらの主張が意味するところは、アメリカはアフガン関与戦略を根本から是正する必要に迫られているのではないかという指摘です。
2014年にはアフガンから国際治安維持部隊(ISAF)の撤退が予定されていますが、それまでにはアメリカやNATO諸国のアフガン戦略は根本から見直されることになると考えます。