【国家は組織があって初めて機能する】週刊『ダイヤモンド』4/2号 櫻井よしこ氏のページより
岩手県花巻市の会社経営者、藤沼弘文氏(六十代)は、東日本大震災の翌日、地元の災害救助隊の活動を開始した。藤沼氏がつくった組織で、地元企業110社で構成する。
藤沼氏らはすぐにできることから始めた。コメ10トンに加えて、下着類やトイレットペーパーなどを各地に運んだ。
そこで目撃したのは、多くの地方自治体が右往左往以前に、茫然自失で立ち尽くしている現実だった。
「中央からの指示待ち体質が強い彼らは、その指示がほとんどないために何をすればよいかわからないのです。地方自治体を効果的に動かすことができない根本的原因は、中央政府が右往左往するばかりで全体を見た指示を出していないからです」
そうしたなかで、唯一、効率的に動いているのが、皮肉にも民主党政権が忌避してきた自衛隊をはじめ、警察、消防など、指揮命令系統がしっかりしている組織であることをあらためて実感したと藤沼氏は語る。
日本の近代国家建設に貢献した伊藤博文氏は「国に組織ありて而して後国始めて始動す」と書き残した。国家は組織があって初めて機能する存在だと言っているのだ。
東洋諸国が西洋諸国に近代国家建設で遅れ続けた一因は、国家組織の有無に起因すると、伊藤は強調したのだ。
組織や制度なしには、国は単なる個人や集落の集合体にとどまり、底力を発揮できないのは明らかだ。
だからこそ、指導者には、危機に際して国家を始動させるための明確な国家意志が求められる。
そのような意識を欠く民主党の指導者にはこの国難を乗り切ることは難しいと思うゆえんである。
引用、以上。
今、菅政権の指導力に多くの疑念が投げかけられています。
民主党政権は、国難にあって「脱官僚」といったスローガンと決別し、官僚組織をフルに活用すべきでしたが、「政治主導」にこだわったあまり、国家組織、自治体組織を効果的に動かすことができませんでした。
この考え方の根本には、菅首相の「国家否定」の考え方があります。
・こういうときこそ国家というものの有り難みが分かる時です。国家に力がなかったら復興不能です。
・今回の震災を見て、「地方分権」や「地方主権」だの言っているのを、ほどほどにしなければならないということや、国丸ごと力を合わせないと難局は乗り切れない、ということを改めて再認識しなければなりません。
・(菅直人が)国家を否定する考え方を持ってるというのは、その通りです。国家の部分が空白地帯になっていく考え方は非常に危険です。
今回のような複合的大規模災害は、単に自衛隊や警察だけでは解決できません。
国家レベルで、全官公庁を中央集権的な指揮下に置いて動かしていく体制が必要です。
今回の震災被害は、民主党の「国家解体思想」が現実のものとなった「人災」であると言えます。