【経済成長に「復活の芽」、震災復興需要で12年度には回復】2011年4月4日 サンケイビジネスアイより
東日本大震災による日本経済への打撃が深刻だ。政府試算によると、直接的な被害額は最大25兆円。
電力不足や、製品や部品の供給網(サプライチェーン)の寸断で輸出・生産は落ち込み、「2011年度はマイナス成長に転落する」との悲観シナリオも出ている。
ただ、被災地での工場生産が徐々に再開されるなど“復活の芽”は出始めており、復興需要から12年度は成長が回復するとの見方が大勢だ。
政府も復興策作りを急いでおり、官民が力を合わせた「知恵の総動員」が求められる。
「震災による電力供給の制約は生産低下だけでなく、企業や家計のマインドに悪影響を与える」。4月1日に就任した日銀の白井早由里審議委員は会見でこう語った。
ある日銀幹部も「阪神大震災にはなかった要素が多く、それだけ日本経済への打撃も大きい」と語る。
大打撃の一つが、白井審議委員が言及した電力不足で、計画停電が続けば生産回復が思うように任せない部分もある。
もう一つは、サプライチェーンの寸断で、東北地方の自動車部品の生産が滞ったため、全国の自動車工場が停止せざるを得なくなったことが代表例だ。
福島原発事故により原発関連の風評被害が海外にも広がっているのも懸念材料。
金融筋によると「西日本で作った製品を輸出する際、『放射能に汚染されていない』という証明書の添付を求められるケースもある」。
海外からみれば東北産も西日本産も一緒で、日本ブランドが不当な評価を受ける恐れもある。
内閣府は3月23日、社会資本、住宅などのストック(資産)が地震や津波で受けた被害額が16兆~25兆円に上るとの試算を発表した。阪神大震災の約10兆円の約2倍だ。
同日の会見で与謝野馨経済財政相は「東北3県の漁港は破壊され、2万隻を超える漁船が使用不能になっている」と、地場産業の壊滅を報告。
「阪神大震災でも本格的に元通りになるのに5年近くかかった。(東日本大震災では)大急ぎでやっても相当な時間がかかる」と述べ、復興の道のりが厳しいとの考え方を示した。
震災前の日本経済は新興国への輸出に牽引され、「踊り場」を脱しつつあるとみられていた。日銀のシナリオでは、今春にも経済は回復経路に戻っていたはず。
11年度の成長率予想は前年度比1.6%、12年度は同2%だった。震災は足元の成長を押し下げ、回復シナリオが後ずれするのは確実だ。
内閣府は11年度の実質GDP(国内総生産)が0.2~0.5%押し下げられると試算。市場からは、11年度はマイナス成長に陥ると予測する声も上がっており、SMBC日興証券は「マイナス0.5%」と推測している。
ただ、「12年度には一転して飛躍に向かう」との見方が多い。
「中心となるのは毀損したストックの回復に伴う復興需要」(大和総研の長内智エコノミスト)だ。住宅投資や公共投資は今夏以降に実質GDPを押し上げ、「13年度まで年間1.3%程度の押し上げ効果を生む」という。
来年度まで待たなくても、「今年7~9月期には工場再建や代替地での生産が進む」(野村証券)との予測もある。
生産拠点の西日本への移転がうまく進めば、「輸出を支える日本の生産能力は大きく落ちない」(金融筋)。
このシナリオ実現の鍵を握るのが、政府のバックアップだ。政府は今国会で、被災地の生活支援やインフラ整備などを盛り込んだ特別立法の成立を目指し、11年度補正予算の策定を急ぐ。
財源を賄うため、「復興国債」の日銀引き受けをめぐる議論も出ており、「復興への具体策は待ったなし」(市場関係者)の状況だ。
民間企業はすでに、被災地の工場再開や西日本への代替生産の動きを活発化させている。関係者の懸命な努力もあって、物流網も回復し始めている。
阪神大震災との比較から、今回は完全復興までにかなりの時間がかかるとみられる。
だが、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「そうした予想をどこまで覆せるか、官民の知恵が問われている」と訴える。
引用、以上。
民主党と自民党は大連立を模索していますが、いまだに両党で一致しているのは「増税」の方向性のみで、増税プランは打ち出せども、復興計画プランは打ち出せていません。
民主党も、自民党も確固とした経済成長政策を持っておらず、菅氏も谷垣氏も「経済成長」ではなく、「財政均衡」を第一の目標にしています。
復興に向けては、報道でも財源論、増税論が中心でした。最近になって、ようやく積極財政論が出てきたくらいで、復興プランを提示できていません。
東北・日本経済復興に当たっては、本記事に「官民の知恵が問われている」と言われているように、政治が復興プランや指針を示し、その方向性に向かって、官僚や自治体、民間の知恵を結集し、強力に実行していくことが求められます。
民主党やみんなの党の言っている「政治主導」は「官僚叩き」「官僚抜き」を意味しているだけであって、本当の「政治主導」を論じてはいないのではないでしょうか。
私は、本当の意味の「政治主導」は、政治が未来ビジョンを示し、官民の力を結集していくリーダーシップだと考えます。
政治の役割は復興に向けた法案整備と予算創出を行い、行政機関を強力な実行エンジンとして活用し、民間の活力を引き出しながら、復興を実現していくべきではないでしょうか。