【北朝鮮が妨害電波、GPS障害…米韓演習妨害】2011年3月6日 読売より
聯合ニュースは6日、ソウルや仁川など韓国北西部で4日に北朝鮮の妨害電波による全地球測位システム(GPS)の受信障害が一時的に起きたと報じた。韓国政府や韓国軍関係者の話として伝えた。
韓国では2月28日から、米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」を実施中で、関係者は演習に支障を生じさせることを意図したものと分析している。
妨害電波は4日午後、南北の軍事境界線に近い開城(ケソン)や海州(ヘジュ)などの北朝鮮軍部隊から、5分~10分間隔で出ていたという。
この影響で、韓国側ではGPSを利用した携帯電話の時計が合わなくなったり、通話時の音質が低下したりしたが、大きな被害はなかった。
引用、以上。
ご存知の通り、GPS(グローバル・ポジショニング・システム、全地球測位システム)は、現代の軍隊に欠かすことのできない装置です。
このシステムは、カーナビゲーション等にも使われていますが、元々は軍事用のシステムで、今は軍民両用のシステムになっています。
GPSシステムは、上空にある複数のGPS衛星衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、受信者が自身の現在位置を知るシステムです。
GPSは世界中どこでもいつでも、最低でも4機の衛星からの信号を受信できるように衛星を配置しています。
アメリカが運用するGPS衛星はナブスターと呼ばれ、ロシアが運用するGPS衛星はグロナスと呼ばれています。
今回の事件で携帯電話の時計が合わなくなるという事態が起こったのは、GPS衛星からの電波を受信して、GPS受信機内部の時計の校正を行ないつつ測位を行なうのですが、妨害電波により信号が受信されなかったために時計の誤差が生じたと考えられます。
GPSは地上約2万キロの上空から弱い電波を地上に出しているため、電波干渉を受ければエラーが発生しやすい状態にあります。
今回の北朝鮮の電波かく乱行為はまだ試験的運用で深刻な被害にまで至っていませんが、今後、大規模な電磁攻撃の可能性が高まっています。
米軍はGPSで使用する周波数を民間用と軍事用とに分けたり、暗号化たりしていますが、軍事用に使用する周波数帯域や暗号を知られれば妨害工作の影響を受けてしまいます。
GPSの受信妨害は、軍隊の移動や巡航ミサイルの誘導はGPSで位置確認を行っているため、大きな混乱をもたらします。もちろん、カーナビ等、民間の交通機関にも大きな障害が生じます。
一方、中国は2007年1月の人工衛星破壊実験に成功しており、有事における中国によるGPS衛星の破壊も懸念されています。(中国は30基の衛星による独自の測位衛星システム「北斗」の整備を急ピッチで進めています。)
日本はリスク回避のために、自前でGPS互換の測位衛星を保有すべきですが、米国が20~24機程度を打ち上げて全地球規模でカバーしているのに対して、日本はまだ1機の試験機しか打ち上げられていません。
北朝鮮や中国によるGPS障害に備えた軍と民間レベルの総合的な対応策が急がれます。